2009年10月21日

現物配当の会計処理と税務

旧商法時代、
会社が現物での配当(現物配当)が
できるかどうか、
議論が分かれていました。

しかし、
会社法においては、
株主総会の特別決議
を経ることにより、
現物配当が
できるようになりました。
配当財産について
制限はありませんが、
配当を行なう株式会社の
株式、新株予約権、社債

配当財産として交付することは
できません。


(1)会計基準と現物配当

一方、会計基準でも、
会社法の規定を受け、
現物配当を行う場合は、
原則として
配当財産を時価で評価し、
帳簿価額との差額は、
配当の効力発生日に属する期の損益
として認識し、
配当財産の時価で
その他利益剰余金
又はその他資本剰余金を
減額することと定めました。

具体的に会計処理で示せば
次の通りです。

≪ 設例 ≫

甲社は、
定時株主総会で
配当原資を繰越利益剰余金とし、
有価証券
(帳簿価額500万円、時価600万円)を
株主に現物配当しました
(源泉徴収は無視する)。

@
株主総会の決議日の仕訳(単位:万円)
  
繰越利益剰余金600/未払配当金600

A
配当財産の分配時の仕訳(効力発生日)

未払配当金600/有価証券500
          譲渡益 100


(2)法人課税と現物配当

現物配当に関しては、
法人税法上
特段の措置を設けていませんが、
次のような理由から、
現物配当を行った法人は、
当該資産の含み損益を認識し、
配当を実施した日の事業年度の
課税所得の損金または益金を構成する
とする考えが支配的のようです。

@
金銭以外の資産を
剰余金の配当として交付する場合は、
交付会社にあっては、
法令に
当該資産の価額を
利益積立金額から減算する
と規定されている。

A
一方、
現物配当を受領した株主
においては、
当該剰余金の効力発生日における
当該資産の価額を
受取配当の額として認識する旨が
法令解釈通達で示されている。

B
現物交付の段階で
含み損益を認識しないと
永久に課税の機会を
失ってしまう。

しかし、
現物配当は、
法人が行う
「利益」または「剰余金の分配」で
資本等取引であり、
さらに、
明文規定がない以上、
損益を認識するとする見解には
疑問が残ります。

また、
消費税法における
課税資産の譲渡等に
該当するかどうか
検討の余地もありそうです。

資本取引と損益取引の両方を併せ持った
「混合取引」の存在を
認識することになるのでしょうか。

≪参考〜関連法令、補足事項≫

1.会社法454第4項

配当財産が
金銭以外の財産であるときは、
株式会社は、
株主総会の決議
(特別決議―会社法309条第2項10号)
によって・・・・・できる。

2.会社法454条第1項1号

配当財産の種類
(当該株式会社の株式等―
株式、社債及新株予約権
「会社法107条第2項二号ホ」―を除く)
及び・・・・・。 

3.会計基準適用指針第2号

10.配当財産が
金銭以外の財産である場合、
配当の効力発生日
(会社法第454条第1項第3号参照)
における配当財産の時価と
適正な帳簿価額との差額は、
配当の効力発生日の属する期の
損益として、配当財産の
種類等に応じた表示区分に計上し、
配当財産の時価をもって、
その他資本剰余金又は
その他利益剰余金
(繰越利益剰余金)を減額する。
ただし、以下の場合には、
配当の効力発生日における
配当財産の適正な帳簿価額をもって、
その他資本剰余金又はその他利益剰余金
(繰越利益剰余金)を減額する。

(1)分割型の会社分割(按分型)
(2)保有する子会社株式のすべて・・・・
(3)企業集団内の企業へ配当する場合
(4)市場価格がなく・・・公正な評価額を
   合理的に算定することが困難・・・・・

4.法人税法22条第5項

第2項又は第3項に規定する資本等取引とは、
・・・・法人が行う利益又は剰余金の分配
(・・・・・)をいう。

5.法人税政令9条7号(利益積立金の減額)

剰余金の配当(・・・)
若しくは利益の配当(・・・・)
剰余金の分配又は
資産の流動化に関する法律・・・・に
規定する金銭の分配の額として
株主等に交付する金銭の額
及び金銭以外の資産の価額の
合計額(・・・・・)。

6.法人税法基本通達3-1-7の5

(金銭以外の資産による配当等の額)

法人が
金銭以外の資産により
剰余金の配当
又は利益の分配を受ける場には、
法人税法第23条(受取配当等の益金不算入)
の規定の適用がある配当等の額は、
原則として、当該剰余金の
配当又は利益の配当の効力発生日
における当該金銭以外の資産の価額による
ことに留意する。

7.現物配当と消費税

基本的には、現物配当は、
株主が法人の株主の地位に基づいて
分配を受けるものであることから、
対価性のある資産の譲渡等の取引ではない。
したがって、現物配当による資産の交付は、
消費税法上、課税対象外と考えられる。

8.現物配当と源泉徴収

源泉徴収は無視できないので、
現実に現物配当の実施にあたっては、
現金配当との抱き合わせによるなど
の方法を検討する必要がある。


〒104-0061  東京都中央区銀座3-9-18 東銀座ビル304
税理士西塚事務所   TEL03-6226-5140

2009年10月21日(水)
posted by 税理士西塚智裕 at 18:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 法人税・会社経理
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/33098549

この記事へのトラックバック
当事務所へのお問合せは、
税理士西塚事務所
TEL : 03-6226-5140
ウェブサイトURL:http://www16.ocn.ne.jp/~nisizuka/
メールアドレス:nishizuka@nishizukajimusho.com