2010年01月22日

非居住者の税務〜恒久的施設有無の判断

外国人(正しくは「非居住者」といいます)
であっても
日本で所得を得れば
(この所得のことを「国内源泉所得」
と言います)
日本の所得税が課税されます。

その課税方式は、
その外国人が
日本にPEを持って所得を得ているか否か
で異なります。

PEがあれば、
源泉分離課税に加えて
総合課税の確定申告義務を負い、

PEがなければ、
源泉分離課税で課税関係が
終了します。

これが、国内税法の原則的な定めです。

PEとは、
permanent establishmentの略で 、
通常、「恒久的施設」
と呼ばれています。

具体的には、

@支店PE
(工場、事務所、営業所等)、

A建設PE
(国内において行う建設、
プラントの組み立て等の作業所)、

B代理人PE
(契約締結等の代理)

に分けられています。


(1)国内税法に優先する租税条約の存在

この国内税法の定めに対して、
一般的には、
その外国人の居住地国と
租税に関する2国間の取決め
(租税条約)があり、
日本で得た所得であっても、
日本にその外国人のPEがなければ、
一定の所得については、
日本では課税しないとする
条約優先の規定があります。


(2)世界的権威の外科医5億円申告漏れ

過日、
新聞報道でも話題になった、
米在住の世界的権威の脳神経外科医が
日本の病院で手術をして得た収入が
3年間で5億数千万円であったが、
日本では申告しておらず、
国税当局は、
所得税及び消費税の申告を求めた、
という内容のものです。

これに対し、外科医は
「顧問の会計士は、日米租税条約では、
日本にPEがなければ、外科医のような
自由職業者の所得について、
日本では課税しないことになっているので
申告の必要はないと言われた」
とコメントしています(詳細は不明)。


(3)問題の所在(PEの事実認定)

実際、
外科医は日本に事業所、手術施設等の
PEを有していませんので、
条約の定めからすれば
日本に課税権はありません。

しかし、
問題になったのは次の点でした。
国税局は実態を調査。
外科医と患者や病院との
連絡やスケジュール調整を
都内の医療機器販売会社に
担わせていたことから、
この会社を、
外科医の代理人としてのPEと認定。
この認定によって、
日本での課税権が生じたようです。
これは、
外科医にとっても想定外だったでしょう、
過去にも個人が代理人PEを持つ
と認定されたことがないようで、
PEの有無の判断に
慎重にならざるを得ません。

※参考 条文等抜粋

(納税義務者)
2  非居住者は、次に掲げる場合には、
この法律により、所得税を納める義務が
ある。
一  第161条(国内源泉所得)に
規定する国内源泉所得
(次号において「国内源泉所得」という。)
を有するとき(同号に掲げる場合を除く。)。
(課税所得の範囲)
第7条  所得税は、次の各号に掲げる者の区分
に応じ当該各号に定める所得について課する。
三  非居住者 第164条第1項各号
(非居住者に対する課税の方法)に掲げる
非居住者の区分に応じそれぞれ同項各号
及び同条第2項各号に掲げる国内源泉所得
(国内源泉所得)
第161条  この編において「国内源泉所得」とは、
次に掲げるものをいう。
1号所得〜7号所得、9号所得〜12号所得・・・・・・・ 省略
八  次に掲げる給与、報酬又は年金
イ 俸給、給料、・・・・・・・これらの性質を有する
給与その他人的役務の提供に対する報酬のうち、
国内において行う勤務その他の人的役務の提供
(・・・・・・人的役務の提供を含む。)に
基因するもの
(租税条約に異なる定めがある場合の国内源泉所得)
第162条  日本国が締結した所得に対する
租税に関する二重課税防止のための条約において
国内源泉所得に・・・・・・、その異なる定め
がある限りにおいて、その条約に定めるところによる。
・・・・その条約により国内源泉所得とされたもの
をもつてこれに対応するこれらの号に掲げる
国内源泉所得とみなす。
(非居住者に対する課税の方法)
第164条  非居住者に対して課する所得税の額は、
次の各号に掲げる非居住者の区分に応じ
当該各号に掲げる国内源泉所得について、
次節第一款(非居住者に対する所得税の総合課税)の
規定を適用して計算したところによる。
一  国内に支店、工場・・・・・有する非居住者
 すべての国内源泉所得 ・・・・支店PE
二  国内において建設、据付け、組立てその他の作業
・・・次に掲げる国内源泉所得・・・・建設PE
   以下省略
三  国内に自己のために契約を締結する権限のある者
その他これに準ずる者で政令で定めるもの
(以下この条において「代理人等」という。)を置く
非居住者(第1号に該当する者を除く。)
 次に掲げる国内源泉所得・・・・代理人PE
    以下条文省略
2  次の各号に掲げる非居住者が当該各号に掲げる
国内源泉所得を有する場合には、
当該非居住者に対して課する所得税の額は、
前項の規定によるもののほか、当該各号に掲げる
国内源泉所得について第3節
(非居住者に対する所得税の分離課税)の規定を
適用して計算したところによる。
  以下条文省略
(日米租税条約)
第7条(事業所得)
1 一方の締約国の企業の利得に対しては、
その企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて
当該他方の締約国内において事業を行わない限り、
当該一方の締約国においてのみ租税を課することが
できる。
一方の締約国の企業が他方の締約国内にある
恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において
事業を行う場合には、
その企業の利得にうち当該恒久的施設に帰せられる部分
に対してのみ、当該他方の締約国において
租税を課することができる。

日米租税条約(外務省)



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2010年1月22日(金)
posted by 税理士西塚智裕 at 11:18| Comment(0) | TrackBack(2) | 所得税
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