2010年04月12日

個人確定申告〜修正など

■個人の確定申告

誤り・失念に気付いたとき!


確定申告も終わり、ホッと一息です。
申告書に関する資料を整理していると、
「税金を過少(過大な還付)」に申告
していたり、
また、「税金を過大」に申告していたり、
その誤りに気付くことが
よくあります。

そこで、
それぞれのケースについて、
適正申告のための諸手続きに関して
整理したいと思います。


■「税金の過少申告(過大還付)」
 に気付いたとき

まず、自主的に「修正申告」を
することでしょう。
これによって過少申告加算税はかからず、
延滞説
(納付期限の2ヶ月以内は4.3%、以後は14.6%)
だけの課税で済みます。

しかし、
税務署からの指摘などによって
不足税金を納めるときは、
原則、追加して納めるべき税金の
10%の過少申告加算税がかかり、
追加税金額が、
期限内に申告して納めた税金
または50万円のいずれか多い金額
を超えるときは、
その超える部分の税金に
15%相当の加算税がかかります。
余分な税金を納めなくてもすむよう、
適時適正な対応が必要かと思います。


■「税金の過大申告」に気付いたとき

税金の納めすぎが判明したときは、
来年の3月15日までに
「更正の請求」をするとによって
税金は戻してもらうことができます。

なお、
申告の誤り内容によっては、
「更正の請求」期間経過後であっても、
税務署長への「嘆願」
あるいは憲法16条に保証された
請願法に基づく「請願権」によって
税金を戻してもらうことができます。

このことを「減額更正」といいます。

この減額更正は、
税務署長が
申告期限から5年以内であれば
できることになっています。


■確定申告を失念してしまった場合

うっかり、
申告期限まで
確定申告を失念してしまった場合には、
原則、
期限後に申告して
納める税金の15%、
その納める税金が50万円を超えるときは
20%の無申告加算税と
延滞税が課されることになるので
注意が必要です。

但し、
期限後申告であっても
税務調査や税務署から指摘される前に
自主的に申告をしたときには、
無申告加算税も
5%に軽減されます。

延滞税の計算方法


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2010年4月12日(月)
posted by 税理士西塚智裕 at 00:51| Comment(0) | TrackBack(2) | 法人税・会社経理

2010年04月09日

申告義務のないサラリーマンの確定申告書

一ケ所からの給与しかなく、
他に所得のないサラリーマンで、
妻を控除配偶者として年末調整を済ませていたが、
妻の所得が38万円超であると分かったため、
税務署に配偶者控除不適用の確定申告書
を提出した場合の
その意味について考えて見ます。


■申告義務のない確定申告書の提出

このサラリーマンには
確定申告の提出義務はなく、
税務署長にもこれに対し
確定申告を強制する決定権限は
ありません。
しかし、
自主的に提出された確定申告書は
法的には有効です。

サラリーマンには確定申告をすることが
禁じられているのではなく、
申告義務が免除されているに
過ぎないからです。


■提出した確定申告の撤回も任意

とはいえ、
サラリーマンの自主申告に対する
国税庁の姿勢は
これを本来のあるべき姿とは
捉えていません。

通達によると、
確定申告義務のないサラリーマン
の提出した申告書は、
撤回の申立てをすると
当然に撤回されることになり、
申告により納付した税額も
還付されることになっています。


■過年度分の申告の場合の附帯税

また、
サラリーマンには、
そもそも確定申告書の提出義務がなく、
従って提出期限の定めもないので、
サラリーマンの提出する自主的申告書は、
たとえ過年度分であったとしても
期限後申告書には該当しません。

従って、
加算税や延滞税の課せられるべき
構成要件に該当することは
ありません。


■再年調処理が実務の慣例

サラリーマンの
自主申告があったことによって、
その者に係る国の歳入額が
すでに充足されていたとしても、
源泉徴収義務者が正当な計算を行って
追徴税額を徴収する義務が
免除されるわけではありません。

課税庁が
年末調整の不適正を知った時は、
源泉徴収義務者を通じた年末調整の
再計算を慫慂(しょうよう)してきます。


■再年調の規定はない

しかし、
法的には再調整の規定は存在しません。
年末調整は
年の最後の給与で行うものとされ、
扶養控除等の情報申告・修正も
給料日前に行うものとされており、
予測された真実に基づく限りそれは適正であり、
源泉徴収義務者には
その申告の正否を調査する義務も権限も
ありません。

※参考

所得税法 第121条
(確定所得申告を要しない場合)
 その年において給与所得を有する居住者で、
その年中に支払を受けるべき第28条第1項(給与所得)
に規定する給与等の金額が2000万円以下
であるものは、次の各号のいずれかに該当する場合には、
前条第1項の規定にかかわらず、
その年分の課税総所得金額及び課税山林所得金額に係る
所得税については、同項の規定による申告書を
提出することを要しない。

◆1
1の給与等の支払者から給与等の支払を受け、かつ、
当該給与等の全部について第183条
(給与所得に係る源泉徴収義務)又は
第190条(年末調整)の規定による所得税の徴収
をされた又はされるべき場合において、
その年分の利子所得の金額、配当所得の金額、
不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額、
譲渡所得の金額、一時所得の金額及び雑所得の金額
の合計額が20万円以下であるとき。

所基通121−2

(確定所得申告を要しない給与所得者
から提出された確定申告書の撒回)

申告書に記載されたところによれば
法第121条の規定に該当することとなる
給与所得者から提出された申告書で
第3期分の税額が記載されているものにつき、
その者から当該申告書を撤回したい旨の
書面による申出があったときは、
その申出の日に当該申告書の撤回があったものとし、
当該申告書に係る既納の第3期分の税額を還付する。

国税通則法 第60条(延滞税)

 納税者は、次の各号の1に該当するときは、
延滞税を納付しなければならない。

◆1
期限内申告書を提出した場合において、
当該申告書の提出により納付すべき
国税をその法定納期限までに完納しないとき。
◆2
期限後申告書若しくは修正申告書を提出し、
又は更正若しくは第25条(決定)の規定による
決定を受けた場合において、
第35条第2項(期限後申告等による納付)の
規定により納付すべき国税があるとき。

国税通則法 第66条(無申告加算税)

次の各号のいずれかに該当する場合には、
当該納税者に対し、当該各号に規定する申告、
更正又は決定に基づき第35条第2項
(期限後申告等による納付)の規定により
納付すべき税額に100分の15の割合を
乗じて計算した金額に相当する無申告加算税を
課する。ただし、
期限内申告書の提出がなかったことについて
正当な理由があると認められる場合は、
この限りでない。
◆1
期限後申告書の提出又は第25条(決定)の規定
による決定があった場合
◆2
期限後申告書の提出又は第25条の規定による
決定があった後に修正申告書の提出又は更正があった場合


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2010年4月9日(金)
posted by 税理士西塚智裕 at 12:24| Comment(0) | TrackBack(1) | 法人税・会社経理

2010年04月06日

税務上の役員〜会社法の役員より範囲が広い

会社が従業員に支払う給料・賞与は、
原則、
その支給時期、支給額等の如何を問わず、
費用として
損金の額に算入することができます。

しかし、役員ともなると、
給料については定期同額、
賞与に関しては事前確定届出といった
その支給形態等について
一定の要件を満たさなければ
損金の額に算入されません。

税法上の役員が
会社法上の役員より
その定義が広いため、
うっかり、
従業員と思っていた者が役員に該当し、
結果、
その者に支払っていた給与・賞与の一部が
損金不算入になってしまうことがあり、
役員の是非について
慎重な対応が必要かと思います。


■税法上の役員となる人

役員と言えば、
会社法上の役員
(取締役、監査役、執行役、会計参与など)
を言いますが、
これらの役員は、
当然、法人税上の役員です。

税法特有の役員とは、
役員の肩書きがなくても、
事実上、会社の経営に関与している人で、
例えば、
会社法上の役員でありませんが、
会長、相談役、顧問といった肩書きで
経営に従事している人、
また、
同族会社の従業員になっているけれど、
一定の持株割合を超える株を持っている人で、
経営に従事している人など
が該当します。

これらの人を
法人税法では「みなし役員」
と言います。


■会社の経営に従事するとは

「みなし役員」に該当するかどうかは、
経営に従事していることが要件です。
「経営に従事している」とは、
経営上の重要な意思決定に
参画していることで、
具体的には、
資金調達等の決定、
新規事業や設備の決定、
事業の撤退、重要な契約に関する決定、
価額の決定、
主要な取引先の選定や変更など
が上げられます。


■使用人兼務役員とは

役員の中には、
取締役営業部長・経理部長・工場長
などの肩書で、
役員でありながら
従業員としての職制上の地位を持ち、
かつ、
常時使用人として職務に従事している人
がいます。

このような人を
「使用人兼務役員」と言います。
この兼務役員の使用人としての
賞与の損金算入については、
その支給に関して
一定の制約があります。
なお、
代表取締役など
一定の役員、同族会社の役員で
一定の持株割合を超えている人は、
使用人兼務役員にはなれません。


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2010年4月6日(火)
posted by 税理士西塚智裕 at 14:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 法人税・会社経理

2010年04月05日

源泉徴収税額表〜平成22年4月以降分

平成22年4月以降分源泉徴収税額表(国税庁)

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2010年4月5日(月)
posted by 税理士西塚智裕 at 11:20| Comment(1) | TrackBack(1) | 法人税・会社経理

2010年03月31日

ホステス報酬の源泉徴収〜源泉所得税

ホステス報酬の源泉徴収

キャバレーなどのホステスの多くは
給与所得者ではなく事業所得者です。

そして報酬を受け取るときには
所得税を源泉徴収されることに
なっています。

徴収額は、
1回に支払われる報酬額から、
1日当たり5000円を控除した額の10%
とされています。


■1日当たりの意味

法律の正式な文言は1日当たりではなく
「計算期間の日数」となっています。

毎週払いだとして、
出勤した5日分として
10万円の報酬を支払うとしたら、

(10万円−5000円×日数)×10%

の計算式で徴収する源泉税を
計算します。

ここで日数は、
7日と5日と、
どちらであるかにつき、
納税者は7日、税務署は5日を主張して
裁判になっているものが
いくつかありました。


■納税者勝訴となった地裁高裁判決

○川崎南税務署長を被告とする裁判

平成18年 5月10日 横浜地裁判決
平成19年 3月27日 東京高裁判決

○立川税務署長を被告とする裁判

平成18年11月21日 東京地裁判決
平成19年 6月12日 東京高裁判決

この二つの裁判事案では、
敗訴の国側は最高裁への上告を断念し、
納税者勝訴となったまま
高裁の判決で決着させています。


■納税者敗訴となった地裁高裁判決

●大宮税務署長を被告とする裁判
平成18年5月24日 さいたま地裁判決

●杉並・武蔵野税務署長を被告とする裁判
平成18年 3月23日 東京地裁判決
平成18年12月13日 東京高裁判決

時期的には納税者勝訴事案と似ていますが、
こちらは納税者敗訴判決となっています。

大宮税務署の事案は
地裁で敗訴したまま
納税者はそれを受け容れ、
控訴しませんでした。

杉並・武蔵野税務署の事案は、
似た時期に納税者勝訴の判決を出している
東京地裁・東京高裁が出した
全く異なる結果の判決で、
これは最高裁に持ち込まれました。


■最高裁での最終決着

最高裁小法廷は、
「施行令にいう『計算期間の日数』とは、
ホステスの実際の稼動日数ではなく、
その期間に含まれるすべての日数を指す」
と判決し、
解釈の最終判断をし、
納税者に逆転勝訴をもたらしました。


ホステス等に支払う報酬・料金等


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2010年3月31日(水)
posted by 税理士西塚智裕 at 18:00| Comment(2) | TrackBack(0) | 法人税・会社経理

2010年03月25日

使途不明金・使途秘匿金

(質問)

取引相手からリベートを要求され、
尚且つ
そのリベート相手を公表できません。
本来キッパリとお断りするのが正しい選択
だとは思いますが、
そうもいかないのです。
どうしたらよいのでしょうか?

(回答)

当然領収書はもらえないと思いますから、
支出した金額は、使途不明金となります。
科目としては交際費として
全額否認することが妥当と思われます。
しかし
現金で先方に渡さず、
必ず振り込むようにしてください。
現金で渡した場合
支出の事実が確認できませんから、
本当はそんな事実は無かったのではないか
と疑われます。

税務調査の折には、
支出の事実(振り込み控え)を
明確にしたうえで、
事情を説明してください。

どうしても相手が
現金でなければだめだ
と言う場合は、
役員への渡し切り交際費
すなわち役員賞与とすることが
妥当だと思われます。

役員への貸付とし、
後で役員報酬を上げて
一部返済に充てるという方法もありますが、
事実が明らかになった場合は、
使途秘匿金とされる可能性が
残ります。



使途不明金とは、法人が交際費・機密費・接待費等の名目で、支出した金銭でその使途が明らかでないもの、または法人が使途を明らかにしないものをいいます。
 一方、使途秘匿金とは、使途不明金のように金銭の支出のうち、相当な理由なく、相手方の氏名、名称等を帳簿書類に記載していないものをいいます。
 更に、使途不明金は全額損金に算入されず所得に課税されるのに対して、使途秘匿金は全額損金不算入となるだけでなく、通常の法人税に加え、支出額の40%の追加課税が行われます。

使途不明金は経費処理が前提です。これに対して、使途秘匿金は経費処理を前提にしておりません。この点から貸付処理は危険です。ただ使途秘匿金は本来の趣旨からすれば、「違法ないし不当な支出」に対する追加課税ですから、経費処理だけを持って使途秘匿金とされるわけではありません。


※参考

1.
使途秘匿金は、
租税特別措置法62条、
措置令38条に規定されています。
要約すると、内容は次の通りです。

(1)
赤字法人であっても、
使途秘匿金の支出があれば、
当該支出の40%の法人税が
課税されます(措置法62条1項)。

(2)
使途秘匿金の支出には、
金銭の支出のほか
贈与等目的のための
資産の引渡しも含まれます
(措置法62条2項、措置令38条4項)。

(3)
公益法人でも、
収益事業に関連した支出は
対象に含まれます(措置法62条4項)。

(4)
相手方の氏名等が
帳簿書類に記載されていないことについて、
「相当の理由」があるものは
使途秘匿金から除かれます。
例えば、
不特定多数の者からの小口の仕入等で、
相手方の氏名等を確認しないことが
取引慣行となっているものは、
相当の理由があるものと
取り扱われています
(措置法62条2項、3項)。

(5)
ダミーを使って使途秘匿金を支出する場合は、
記載したものとみなされません
(措置令38条3項)。

(6)
相手方の氏名等が
帳簿書類に記載されていない支出であっても、
「対価性」が明確な支出であれば、
使途秘匿金から除かれます
(措置法62条2項)。


2.
使途秘匿金は、
「法人がした金銭の支出のうち、
相当の理由がなく、
相手先の氏名等を当該法人の帳簿書類に
記載していないもの」
をいいますが、
この記載をしているかどうかの判定時期は
次の通りです。

(1)
原則として、
当該支出をした事業年度終了の日及び
中間の申告に係るみなし事業年度については
当該みなし事業年度終了の日の現況
によります(措置令38条1項)。

(2)
但し、当該支出した事業年度に係る
確定申告の提出期限及び中間申告書を提出する場合は
当該申告書の提出期限において
帳簿書類に記載されているときは、
事業年度終了等にその記載があったものと
みなされます(措置令38条2項1号)。


3.
帳簿等の記載時期の判定等から、
確定申告書の提出後、
税務調査を受けた時に
使途を明らかにして帳簿等に記載しても、
使途秘匿金であることに変わりはなく、
その支出に係る追加課税は行われます。
これに対して、
費途不明の交際費等には
このような判定時期の期限はありませんので、
税務調査で費途が明らかになったときは、
費途不明の交際費等としての損金不算入は
取り消されます。
但し、費途が明らかになっても、
措置法61条の4の規定による交際費等として
損金不算入になることが多いと
思われます。


4.
費途不明金の交際費等の意義については、
法人税法基本通達9−7−20に
規定されています。


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2010年3月25日(木)
posted by 税理士西塚智裕 at 11:22| Comment(1) | TrackBack(1) | 法人税・会社経理

2010年03月23日

役員報酬〜業績連動できないのか?

(質問)

当社は販売会社です、
当社の経費の多くは人件費です。
この厳しい経済情勢を踏まえ
全社員の報酬を
売上によって、変動させたい
と思いますが、
役員の報酬だけそのまま
と言うわけにはいきません。
役員の報酬を動かすとことは
できないのでしょうか?

(回答)

■使用人兼務役員の場合

兼務役員はOKです。
平成18年の法人税法の改正で、
役員の報酬は1年間
定期同額が原則となりました。
役員と言っても様々ですが、
ご質問の役員は取締役だと思います。
取締役の主要な業務は、
取締役会へ出席し、
取締役会の一員として
業務の意思決定を行うことです。

しかし
多くの中小企業の場合
取締役と言えども、
毎日の多忙な業務に追われているのが
実情です。
ですから、取締役としての報酬と、
実際に日常業務をこなす
管理職としての報酬を区分し
管理職としての報酬を上下させる分には
特に問題はありません。

■代表取締役はカットだけで

但し業務執行権を持つ取締役、
すなわち代表取締役や、
常務・専務等に関しては、
そうは行かないのが現状です。
部下の給与や報酬をカットしておいて
自分の報酬だけそのままと言うのは、
経営者としてどうかと思われますし、
会社の士気にもかかわります。

方法としては
社長等の報酬を想定できる範囲の
最低の報酬までカットし、
事業年度終了まではその報酬を維持することが
最善の策だと思われます。

国税当局は、
原則カットしても定期同額ではないので、
否認するとの見解ですが
業績が悪化し、やむを得ない場合は認めると、
その判断を現場の実情に委ねています。

■事業年度終了までは我慢してください

途中で業績が回復した場合には
カットを元に戻したい気持ちもわかりますが、
現在の税法では、
戻した報酬は確実に否認されますので
ご留意下さい。


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2010年3月23日(火)
posted by 税理士西塚智裕 at 19:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 法人税・会社経理

2010年03月19日

資本金の額と法人税制

資本金とは何か、
そして、その金額は何処にあるのか、
そんな素朴な問いの返答には苦慮します。
難しい資本金概念の
通説的な解釈は別として、
資本金の額は、一般的には、
会社の事業規模、信用度等を現す
主要な指標の一つであることには
間違いないようです。

このことを考慮してか、
法人税制(国税及び地方税を含む)では
「資本金の額」によって
税率や租税特別措置法等の適用範囲について
異なる取扱をしています。

主な項目について、
「資本金の額」による
税制上の取扱の違いを見てみましょう


■法人税法・消費税法における取扱上の違い


1)法人税率

資本金1億円以下の法人

年間所得金額800万円以下の部分
に対する税率は22%です
(現在は時限措置で18%)。


2)交際費の損金算入限度額

交際費の損金算入限度額は、

@期末資本金1億円以下の場合は、

年間400万円(現在は時限措置で600万円)
但し、10%部分は課税、

A期末資本金1億円超の場合は、

ゼロです。

3)設備投資減税

資本金1億円以下の法人で
一定の要件を満たすものは、

@
取得価額30万円未満の
少額減価償却資産については
年間300万円まで取得時に全額損金
(原則、資産計上の上減価償却)、

A
一定の機械装置及び器具備品、
ソフトウエア、大型貨物自動車等
の取得には、
取得価額の30%の特別償却
又は取得価額7%の税額控除が
適用できます。


4)貸倒引当金の繰入限度額

貸倒引当金は、原則、
過去3年間に貸倒の実績がなければ
繰入れることができませんが、

資本金の額が1億円以下の法人の場合、
法定繰入率による繰入れが可能です。


5)消費税の納税義務

資本金の額1,000万円未満の法人は、
設立当初の2年間は
納税義務が免除されます。


■地方税法における取扱上の違い


1)法人事業税の外形標準課税

資本金1億円以下の法人には、

外形標準課税
(所得割額+付加価値割額+資本割額)

の適用はなく、所得割額のみです。


2)法人県民税(都民税)の税率

資本金の額1億円以下でかつ
法人税額が年1千万円以下の法人は、
税率が軽減されています。


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2010年3月19日(金)
posted by 税理士西塚智裕 at 11:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 法人税・会社経理

2010年03月11日

減価償却〜資本的支出と耐用年数

■原則的な取扱い

減価償却資産について修繕等をして、
資本的支出として
損金の額に算入されなかった金額
がある場合には、
その金額を取得価額として、
修繕対象資産と
種類及び耐用年数を同じくする資産を
新たに別途取得したものと扱われます。


■翌年期首の選択事項

その事業年度の前事業年度において、
修繕対象資産と資本的支出につき
別個に減価償却している場合で、
その資産が定率法を採用している
平成19年4月以後取得資産のときは、
その事業年度の期首の日付にて、
修繕対象資産と
資本的支出の期首帳簿価額の合計額を
新取得価額とする
一の中古の減価償却資産を
新たに取得したものとすることが
できます。


■一の新取得とされた中古資産の耐用年数

中古資産に新たに付される耐用年数は、

(1)
資本的支出額が対象資産の再取得価額の
50%以下のときは、

@使用可能期間としての見積年数
A簡便法で計算した年数

のいずれかの方法により定められます。

(2)
資本的支出額が対象資産の再取得価額の
50%超のときは、

上記の@Aの適用がないので、
本来の法定耐用がそのまま付される
ことになります。

再取得価額とは、
中古資産と同じものの新品を取得する場合の
その取得価額をいいます。

新品価額の50%相当額を
超える資本的支出を行った場合には、
その資産はもはや中古とは言えず、
新品と同様に取り扱うべきとの考えで、
先の(1)と(2)の区別がなされている
ようです。


■当初からの中古資産への資本的支出

資本的支出をする対象となった資産が
もともと中古資産で、
見積法あるいは簡便法で
耐用年数が決められていた場合、
この度の資本的支出の額が
新品再取得価額の50%を超えるような時には、
一の中古の資産に対し
旧来の耐用年数ではなく、
本来の法定耐用が付されることに
なります。

このようなケースでは、
冒頭の原則的取扱いのままの場合なら、
もともとの対象資産の短い耐用年数が
資本的支出にも適用になるので、
選択の有利不利は
よく検討しなければなりません。


法人の減価償却制度の改正に関するQ&A
 (平成19年4月)


中古資産の耐用年数

耐用年数通達1-5-3など


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2010年3月11日(木)


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2010年03月10日

倒産の形態〜破産、特別清算、会社更生法、民事再生法

一口に「倒産」と言いますが・・・

近時、事業会社では
我が国最大の負債額による
日本航空の
会社更生手続申請による倒産が
大きなニュースとなりました。

どんな大会社でも倒産し得ることを
今更ながら思い知らされます。
もっとも、
事業は継続し、
飛行機は変わらず運行されております。

これに対し、
同じ倒産でも事業を畳んで、
財産を換価の上、
債権者に分配して終結する形も
あります。

このように、
一口に倒産手続に入ったと言っても、
具体的にどうなるかは
ケースバイケースです。


■大別すれば、「清算型」と「再建型」

倒産処理の形は大別して

清算型と再建型があります。

まず、清算型は、
倒産状態になった債務者の財産を
あまねく換価して現金化し、
それを債権者に可能な限り弁済することを
目的とします。
この場合、債務者が法人の場合には、
存続・再建を予定しておらず、
解散へ向かいます。
裁判所関与の下で行われる
法的処理手続としては、

破産、特別清算が
これにあたります。

これに対し、再建型は、
倒産状態になった債務者の財産を
直ちに換価・分配することは
必ずしも予定せず、
債権者らの権利を変更
(債権額の全部又は一部のカット、
分割弁済・期限の猶予等のリスケジュール)
したうえで債務を軽くして、
今ある財産を基礎にして収益を上げ、
権利変更により軽くなった債務を
弁済すること等で、
債務者の事業又は経済生活の経済的再生を
図ります。
法的処理手続では、

会社更生法、民事再生法が
これに該当します。

もちろん、裁判所が関与せず、
債権者と債務者等の当事者の協議による
私的整理でも清算型・再建型は
存在します。


■両者の区別は相対的

もっとも、
両者の差異は相対的なものであることに
注意が必要です。
債務者が個人の場合には、
清算型に属する破産手続は、
これに付随する免責手続の存在により、
再建型として事実上機能していることが
ほとんどです。
また、
再建型に属する
民事再生手続又は会社更生手続でも、
事業を他社に譲渡し、
残った会社を清算を目的とした
再生計画案又は更生計画案が
作成されることもあります。


破産法の条文

特別清算の条文

会社更生法の条文

民事再生法の条文


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2010年3月10日(水)
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2010年02月23日

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)

■経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)

〜 税制改正の隠れた目玉 〜

独立行政法人中小企業基盤整備機構の所管する
中小企業倒産防止共済制度について
今般税制改正の対象になっています。


■倒産防止共済制度

中小企業倒産防止共済制度は、
いつ起こるかもしれない「取引先の倒産」
というような不測の事態に直面した中小企業に
迅速に資金を貸し出しする共済制度です。

毎月20万円以内の掛金を
総額が800万円になるまで積み立てることが
できます。

また加入者は、取引先が倒産した場合に、
積み立て掛金総額の10倍の範囲内
(最高8千万円まで)で回収困難な
売掛債権等の額以内の貸し付けを
受けることができます。


■どこが税制改正?

今回の改正項目は、
月額掛金と積立限度額が
2.5倍に膨らんだことです。

この共済掛金は全額損金(必要経費)
になりますので、
年間240万円の費用を数年にわたり
創り出せることになりました。

留意すべきは、
損金(必要経費)になるこの掛金が
掛け捨てでないことです。

本来は積立金であり、
掛け捨ての保険ではないにもかかわらず、
毎月の掛金は、
税法上損金(法人)または必要経費(個人)に
算入できるのです。


■注意すべきこと

解約は自由です。
ただし無利息です。
40ヶ月以上積み立てれば100%戻ります。

40ヶ月以内の解約は損をします。

倒産防止共済金を掛金の10倍まで利用しても
無利息とはなっていますが、
共済金の10分の1の掛金が没収となるので、
全体で10%の利息となります。
最長期間の5年で返済とすると
年利4%に相当します。
積立金が無利息であることを考慮すると、
高すぎる金利と言えます。

純粋に節税商品として利用するのが
最も有利な利用法といえます。


■税制上の留意点

毎月掛金の損金(必要経費)算入は租税特別措置法に規定されていますが、損金算入に関する明細書の添付がない場合には、適用しない、とされています。法人税の場合は別表十(六)が用意されています。
また、積立期間40ヶ月以上経過後の任意解約による積立金の全額返還は益金(収入金額)となるので、解約のタイミングも留意事項と言えます。


税制改正パンフレット(財務省)

平成22年度税制改正(中小企業関係)中小企業庁

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)


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2010年2月23日(火)
posted by 税理士西塚智裕 at 11:02| Comment(0) | TrackBack(1) | 法人税・会社経理

2010年02月22日

マル経融資の金利2年間0.5%低減

■東京商工会議所の推薦が必用です

マル経融資制度は、
経営改善を図ろうとする
小規模事業者の方々をバックアップするため、
東京商工会議所の推薦により、
無担保・保証人不要・低金利で融資を受けられる
国(日本政策金融公庫)の公的融資制度です。

■設備資金につき当初2年間0.5%金利低減

設備資金につき
平成22年9月末貸付分まで、
当初2年間0.5%低減した金利
の適用が可能となったそうです。
平成22年2月10日現在、1.85%
の金利が1.35%になります。

小規模事業者経営改善資金(マル経融資)

日本政策金融公庫


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2010年2月19日(金)


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給与源泉所得税〜扶養の申告等の間違い

■給与の税金確定の構造

年末調整においては、
給与所得者の提出した
扶養控除等申告書などに記載された
申告内容に基づいて、事務処理が
されます。
その際、
扶養親族の該当性の適否判定は
記載者本人がするのであって、
記載された内容の適否についての
調査義務・調査権限は
給与の支払者にはありません。

ところで、税務署の調査により、
記載内容の適正さに疑問が指摘される場合、
給与所得者本人にはその通知は送られず、
給与支払者に送られてきます。

扶養控除等申告書の記載を修正させて
年末調整をやり直すことを
要求してくるのです。
それで、本人が修正に応じ、
年末調整がやり直しとなり、
不足税額を納付すると、
その後、不納付加算税や延滞税の追徴が
なされます。
給与支払者には落ち度がないのに、
このペナルティーは理不尽ですが、
多くの場合、
不正記載者本人に追徴額の転嫁が
されているのではないかと
思われます。


■不正記載を修正できないときは

不正記載があっても、
扶養控除等申告書の記載の修正がない限り、
年末調整のやり直しはできませんので、
すでに退職してしまった人の場合には
どうすればよいのでしょうか。

給与支払者に特に過失がなく、
税額を再計算して徴収し直し、
納付することもできない場合には、
給与支払者をそれ以上追及しない、
との通達があります。

そんな場合に、
税務署長が
退職した給与所得者本人に対して直接、
所得税額の決定をして
不足税額とペナルティーの追徴処置をした
という事例がありました。
不正申告者を放置しないという趣旨ですが、
この決定処置は奇しくも
国税不服審判所にて取消しの憂き目に
会っています。
なぜかというと、
給与所得者は年末調整されるだけで、
確定申告をする義務がなく、
義務がない者への
税務署長の直接的納税強制の決定には
法律の根拠がない、ということです。


■給与の確定申告不要制度の不備

この事例は、
別居母親に
月額約10万円程度の
家賃相当額を援助していたことから
扶養親族として届け出ていた
というもので、
もし、本人が退職しておらず、
税務署の指摘にも応ぜず、
税務署長が会社宛に追徴処分をし、
会社は本人に転嫁する、
というような場合には、
誰と誰が争うことになるのか、
法が不備で混沌としてきそうです。


給与所得者の源泉徴収に関する申告


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2010年2月19日(金)

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2010年02月15日

外貨MMFの為替差益

■急激な円高

このところの円高は
輸出企業にとっては
大変きついものがあります。
2007年8月の
サブプライムローンの問題が
表面化する前のレートが
1ドル124円だったのが、
一時84円まで円高が進みました。

投資家の間では70円台の円高も
あるのではないか、
長期的にはドルは
下落していくのではないかと
言われています。

また、その一方で
この円高はチャンスだと捉えて
外貨預金に換える動きも出ています。

今後円高になるか円安になるかについての
予測はできませんが、
外貨預金については、
為替差益についての節税方法があります。

元本が多ければ多いほど
その効果はてきめんですが、
リスクも大きくなることには
ご留意下さい。


■外貨預金

一般的に
外貨投資といえば
外貨預金ではないでしょうか。

一時期より金利が低くなったとはいえ、
オーストラリアドルに関しては
3%強の金利がつきます。

ただし金利とともに
為替差益を狙うのであれば
事情は変わってきます。

外貨預金の為替差益については
雑所得として
総合課税が適用されます。

最高で50%の累進課税となってしまい、
所得が多い方ほど
多くの税金を納めなければなりませんが、
この税金を無くすことができるのです。


■外貨MMF

外貨預金とは
似て非なるものがあります。
それは外貨MMFという
金融商品です。

外貨MMFとは
マネー・マーケット・ファンドの略で
公社債や短期金融商品を中心に
運用されています。
米国では現金に準ずる
安全な金融商品とされています。

外貨MMFでは
為替差益については
非課税とされています。

これは債券の譲渡益は
非課税という大原則が
貫かれているためです。

つまり、
1ドル80円の時に
外貨MMFを800万円分購入して
1ドル120円の時に
外貨MMF1200万円分を売却して
為替差益400万円を得たとしても
税金は取られない仕組みになっています。

外貨預金では同じケースの場合、
最高税率の方ですと
200万円の納税となります。

税法の解釈により
似たような金融商品でも
税金にこれほどの差が出てしまいます。



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2010年2月15日(月)
posted by 税理士西塚智裕 at 11:07| Comment(0) | TrackBack(2) | 法人税・会社経理

2010年02月02日

生命保険金〜保険金受取人〜同時死亡

■商法の保険条項

商法によると、
保険契約者には、
保険金受取人を指定する権利があるが、
もし
指定されていた保険金受取人が
死亡したときは
再指定することができる、
ただし
その権利を行使せずに
保険契約者本人が死亡したときは、
保険金額を受取るべき者の相続人を以て
保険金額を受取るべき者とする、
との規定があります。


■こんな場合はどうなる

A氏は、
P生命保険会社との間で
被保険者をA、
保険金受取人をAの妻Cとする
生命保険契約を締結していました。

AとCの両名が事故により
同時に死亡したことから、
Aの弟BとCの兄DがP社に対して
保険金の支払を求めた事案です。

なお、AとCとの間には子はなく、
Aの両親及びCの両親は、
いずれも既に死亡しており、
Aには弟B以外に兄弟姉妹はおらず、
Cには兄D以外に兄弟姉妹は
いませんでした。


保険金受取人は弟Bか兄Dか?
それとも両者で折半か?

■同時死亡の推定規定

民法には同時死亡の推定規定が
あります。

数人の者が死亡した場合において、
そのうちの1人が
他の者の死亡後になお生存していたことが
明らかでないときは、
これらの者は、
同時に死亡したものと推定する、
と規定されています。

この規定により、事故などで、
死亡の前後が不明なときは、
同時に死亡したこととされます。
ただし、
同時死亡の推定の効果は
推定にすぎませんので、
異時死亡を立証することができれば
その法的効果は覆えされる
ことになります。


■同時死亡の場合の相続権

相続人は
被相続人の死亡時に
生存している者に限られる
と解釈されるので、
AとCの同時死亡の場合、
死亡したAの相続人に
Cが該当するかというと、
Aの死亡時にC(妻)は
生存していないので、
CはAの相続人になれません。

逆にAもCの相続人にはなれません。

従って、
保険金の受取人は妻Cであったので、
妻Cの相続人である兄Dが
保険金受取人ということになります。

※参考
最高裁判所平成19年(受)第1349号共済金請求事件(棄却)(確定) 
平成21年6月2日判決  
【判例タイムズ1302号105頁】
【判例時報2050号148頁】
【年金共済特約の解釈/親子同時死亡の場合の死亡給付金受取人】

最高裁判所(第三小法廷)平成21年(受)第226号死亡給付金等請求、民訴法260条2項の申立て事件(棄却)(確定)
平成21年6月2日判決
【裁判所ホームページ最高裁判例集】
【判例タイムズ1302号105頁】
【判例時報2050号148頁】
【同時死亡における生命保険金の受取人】



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2010年2月2日(火)
posted by 税理士西塚智裕 at 10:42| Comment(2) | TrackBack(1) | 法人税・会社経理

2010年01月29日

功績倍率〜役員退職金

■功績倍率法が普遍的

役員退職金について、
法人税法では
「不相当に高額」な部分を
損金不算入としています。

いわゆる過大役員退職金問題です。

役員退職金を
いくらにすればよいかの話題のときの
適正額の限度基準としては
一般に功績倍率法が多く採用
されています。

功績倍率法は、

「役員の最終月額給与×勤続年数×功績倍率」

の算式で表現されます。


■功績倍率の無難値

この算式の中で、
最も争いの種になるのが
「功績倍率」の部分ですが、
代表取締役社長の退任については
一般に「3」を採用すれば
無難と解されています。

「3」を無難とする法律や
通達の根拠はないのですが、
判決の積み重ねの中で
基準値として確立してきたもの
と言えます。


■モデル判決

最も基準とされる判決は
昭和55年5月26日の東京地裁判決です。

この訴訟で
被告税務署長は
「全上場1603社の実態調査の結果から
算出される功績倍率の平均が
社長3.0、専務2.4、常務2.2、
平取締役1.8、監査役1.6」
であると主張し、
これが
高裁、最高裁の判決においても採用されて、
以後の税務行政に影響を与えてきました。


■それでも異なる個別事案判決

とは言え、
その後の判決の中でも、
昭和63年9月30日の静岡地裁判決は
功績倍率2.2を採用し、
平成19年11月15日の
国税不服審判所の裁決では
1.9を採用していますので、
功績倍率3.0が
必ずしも安全値と言えるわけでは
ありません。

逆に、
昭和51年5月26日の東京地裁判決では7.5、
最近でも平成16年6月15日の
国税不服審判所の裁決では4.7
を採用するなどのケースもあります。


■スジ論と形式論

本来、
役員退職金をいくら支払うかは、
会社が主体的に判断することで、
他に基準を求める話ではないともいえ、
会社への貢献の度合いを
分析的に明らかにし、
資料的に整えることを通じて、
算定することが重要です。

そうではあるものの、
事前に功績倍率法の
各算定項目事項を整備し、
功績倍率「3」を採用しておくことが、役
員退職金の金額妥当性の
税務調査時の説明上、
有効性を確かに持っているように
感じられる所です。



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2010年1月29日(金)
posted by 税理士西塚智裕 at 18:33| Comment(4) | TrackBack(1) | 法人税・会社経理

2010年01月28日

減価償却資産〜機械装置/器具備品〜区分

減価償却資産において、
「機械及び装置」と「器具及び備品」
については、
法令上の明確な定義はないようです。
減価償却資産の
耐用年数等に関する省令には、

別表1
(機械及び装置以外の
有形減価償却資産の耐用年数表)、

別表2
(機械及び装置の耐用年数表)、

別表3
(無形減価償却資産の耐用年数表)、

別表4
(生物の耐用年数表)

等が掲げられ、
それぞれ耐用年数が定められています。

また、
実際の運用にあたっては、
「耐用年数の適用等に関する取扱通達」
に委ねられています。

そして、器具及び備品は、
別表1において、構造又は用途に応じて
12に区分され、
さらに細目別に個別具体的に掲げられている
だけです。

一方、
機械及び装置も、55の「設備の種類」
(平成20年4月の改正前は390に区分されていた)
に括られているだけです。

そこで、
ある減価償却資産が、
「機械及び装置」又は「器具及び備品」の
いずれに該当するかの判断に当たっては、
困難な場面に直面することも
あるかと思います。


■区分する判断の目安

明確な基準というのもがありませんが、
@
どのような用途に使用されるのか、

A
各資産が基本的には単体で個別的に
機能、作動するものなのか、

B
他の機器と一体となって設備を形成し、
その一部として各機能を
はたすものなのか等が目安になる
ものと思われます。


■具体的な事例

産業用ロボットと言えば、
製造業者が生産工程の一部において
人に代わって部品の仕分けや組み立て、
溶接作業等に使用するケースが一般的で、
この場合のロボットは、
別表2「機械及び装置」
に分類されることは明らかでしょう。

しかし、近年では
製造業に限らずサービス業や小売業でも
ロボットを使用する企業も
少なくありません。
この場合の判断ですが、
使用するロボットの用途が
商品の運搬等に使用するものであれば、
上記の判断の目安から、
別表1の「器具及び備品」に区分され、
「11 前掲のもの以外のもの」の
「その他のもの」の「主として金属製のもの」
に該当するものと思われます。

また、
医療機関で使用している
様々な診療用機器も
「器具及び備品」の「医療機器」
のいずれかの細目に区分され、
そこで定められた耐用年数を使用する
ことになります。


耐用年数の適用等に関する取扱通達


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2010年1月28日(木)
posted by 税理士西塚智裕 at 11:48| Comment(2) | TrackBack(0) | 法人税・会社経理

2010年01月26日

税金の消滅時効

■時効制度とは

時効とは、法律用語の一つで、
ある出来事から一定の期間が
経過したことを主な法律要件として、
現在の事実状態が法律上の根拠を
有するものか否かを問わずに、
その事実状態に適合するよう
権利又は法律関係を変動させる制度です。


■破産制度も

破産も
債権債務関係を強制的に変動させる制度で、
特に自己破産の場合は、
破産宣告を受けて、免責を受けると、
債務がゼロになり、
ゼロからの
再チャレンジの機会を
得ることになります。

ただし、
税金等の公租公課や
養育費や扶養義務に基づく支払債務などは
公序良俗的理由から
例外的に免責されません。


■国税の時効

国税徴収権の消滅時効の期間は
法定納期限から5年です。

ただし、
刑事告発されるような
「偽りその他不正の行為」
が発覚した場合には、
時効の完成は7年に延びます。

租税債務は破産でも
消滅しないのですから
特別扱いなのですが、
時効についても何か
特別扱いがあるかというと、
そういう規定は特にありません。

逆に、
「その援用を要せず、またその利益を
放棄することができない」とされていて、
納税者に有利な規定と
なっています。


■税金の場合の時効消滅

国税徴収官には、
滞納税金の消滅時効を回避保全する事が
義務付けられています。
滅多なことでない限り
単なる期間の徒過による時効消滅は
ありそうではありません。
それでは、
納税者が破産宣告を受けた後でも、
督促状が送り続けられてきた上で、
破産後5年経過前に
時効中断措置が採られるものなので
しょうか。

形式的には
そういうことになるのでしょうが、
実際には
民間の債権債務の貸倒処理と同じく、
滞納税金が少額であるとか、
回収費用がかかりすぎるとか、
回収そのものが困難とかの場合には、
時効回避保全事務を
解除する措置をとりますので、
督促状も来なくなり、
滞納税金も時効期間の経過とともに
消滅することになります。


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2010年1月26日(火)
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2010年01月21日

経常利益を高めるための分析

検査装置製造業・従業員70名のR社では
社長が利益重視の企業体質づくりと
社員の意識・行動改革をねらって、
全社員に
「製品別利益率と販売実績によって
会社の営業利益・経常利益に
どのような変化が起きるか」を
説明・理解させた上で、
全員が見えるように
毎月の売上・利益・利益ランク別
製品別売上実績を掲示しています。

社員はそれを見ながら
あれこれと議論して、
自発的に製造現場でコストダウンの改善や、
販売経費の効果的な使い方を工夫するなど、
会社の利益向上に貢献しています。 


経常利益増加率

「経常利益」は本業を含め、
普段の事業活動から得られる利益であり、
その増加率を高めるためには、
「売上高増加率」と併せて分析し、
改善課題を見つけることが大切です。


売上と利益の増減ポジションと対策

売上増加率と経常利益増加率を
クロスさせて自社のポジションを判断し、
対策を検討します。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 区 分      経常利益増加率
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    | 増加    |    減少
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
売上高 |増加 | 増収増益(T)| 増収減益(V)  
増加率
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
|減少 | 減収増益(U)| 減収減益(W)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

問題は
「増収減益(V)」・「減収減益(W)」
の場合です。

「増収減益(V)」の場合は
「売上高総利益」の増減をチェックし、
減少していれば
商品の採算性が落ちている原因を
突き止めることが必要になります。

「売上総利益」は増加している
にも関わらず、
経常利益が減少している場合は
業務効率化などによる
経費削減が必要になります。

減収減益(W)の場合は、
まず売上高の分析を行い、
商品の採算性確保や
経費削減を検討することが必要です。

なお、「減収増益(U)」の場合は
高採算商品販売の重点化に成功しているか、
徹底した経費削減が功を奏した結果、
その他の特殊要因が考えられます。


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2010年1月21日(木)

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2010年01月19日

年金の受給資格〜第3号被保険者

妻の年金第3号被保険者とは

いわゆるサラリーマンの妻で
被扶養者の方は、
年金に関しては第3号被保険者
となります。
夫(配偶者)の会社を通して
第3号被保険者の届出を行うことにより、
国民年金の保険料を支払った
納付期間として扱われます。

被扶養者であるかどうかの認定基準は
健康保険の被扶養者の認定
の取り扱いに準じ、
原則として年間収入が130万円未満の人
が該当します。
保険料は
夫が加入している年金制度から
国民年金制度に対し、
拠出金として支払われ、
被保険者が個別に負担することは
ありません。

夫が厚生年金や
共済組合に加入していることが
前提ですので、
夫が国民年金の加入者の場合は
被扶養者であっても
60歳未満ならば
保険料は自ら納めなければなりません。


以前は妻の加入は任意であった

年金制度に
このような第3号被保険者制度
が導入されたのは、
昭和61年4月ですから
その前は夫が厚生年金や
共済組合の加入者であって
妻がその被扶養者であったとしても、
妻は国民年金に加入するかしないかは
自由であり、
「任意加入」とされていました。

加入すると
保険料負担があるため、
多くの妻は未加入であったようです。


カラ期間は加入期間と算定される

国民年金の受給資格を得る
原則25年の加入期間を得るのに、
任意加入しなかったという理由で
受給資格期間が足りないのでは、
不合理ということにもなりますし、
一方で
実際に任意加入し、
保険料を支払っていた人もいるので、
同じ扱いでは
支払った人は納得できない事でしょう。

そこで
年金を受給できるかどうかを
確認する時には、
任意加入をしなかった期間を反映し、
受給資格期間とはするが
年金額には加算されない、
カラ期間として扱います。

この期間を忘れている方や、
婚姻前の若い頃の加入期間が
漏れている方も時々いますので、
確認をしてみるのが良いでしょう。


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2010年1月19日(火)
posted by 税理士西塚智裕 at 12:20| Comment(0) | TrackBack(3) | 法人税・会社経理
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