2010年09月14日

不動産投資信託(J−REIT)

大家さんの悲鳴


毎年、確定申告の時期に
個人の地主さんの不動産所得の計算をしますが、
決まって税金が安くならないかと
相談を受けます。
話を聞いてみますと、
確定申告の所得税から始まって、
消費税、住民税、事業税、固定資産税と
払う税金が多すぎるのではないのかと
いわれてしまいます。
また、昨今景気が悪いせいか
空室率が高くなってきて、
空室にならないため
家賃を下げて募集をかけているとか、
家賃の支払いができない店子さんが
出てきてしまい困っている。
はては、家賃の支払いができない店子さんが
夜逃げをして部屋をゴミ屋敷にしてしまい、
その撤去費用、改修費用の支払いが
出てしまったとか、
いろいろな苦労話を聞かされてしまいます。
しかし
これらは不動産を持っている人の悩みで、
持てない人から見れば、
羨ましい悩みでもあります。

しかし
不動産を持てない人でも
不動産投資はできます。
それが不動産投資信託です。


■不動産投資信託

不動産投資信託とは
投資信託の一種で
投資対象が株や債券ではなく
不動産だけとなっていて、
不動産から生まれる収益を投資家に分配する
金融商品です。
投資対象とされている不動産も多種多様で
オフィスビル・商業施設・物流施設・住居・ホテル
などとなっています。
現在上場されている不動産投資信託は37銘柄で、
決算月は年2回(1銘柄だけ年1回)あり、
上場株のように3月に集中していませんので
組み合わせの仕方によっては
毎月分配金を受け取ることも可能です。
平成22年8月現在の全銘柄の
平均予想利回りが5.6%と高めになっていて、
なかには予想利回りが
6〜8%と高い銘柄もあります。
この利回りの高さの秘密は、
不動産投資信託は
不動産から得られた利益の
ほぼ100%を投資家に分配し、
分配前の収益には
税金がかからないためです。
投資家への税金は
証券税制のため
分配金に対して10%の税金が
課せられて終わりです。

ただし、
不動産の直接所有はできません。
最大のリスクは
運営会社の倒産です。


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税理士西塚事務所   TEL03-6226-5140

2010年9月14日(火)

posted by 税理士西塚智裕 at 17:37| Comment(8) | TrackBack(2) | 所得税

2010年09月06日

みなし取得費の特例〜平成22年12月31日廃止

猫の目のように変わる昨今の証券税制ですが、
整理しますと次のようになります。

1)
平成20年度税制改正により、
平成21年以降の所得について
確定申告で申告分離課税を選択することにより、
上場株式等の譲渡損失と、
上場株式等の配当金及び
株式投資信託の分配金との
損益通算が可能。

2)
平成22年以降は、
特定口座の「源泉徴収あり口座」
にて受入れた上場株式等の配当金
及び株式投資信託の分配金と
特定口座内の譲渡損失との
損益通算が可能。

3)
上場株式等の売却益に係る税率は、
平成21年〜23年までは10%(所得税7%、住民税3%)、
平成24年以降は20%(所得税15%、住民税5%)。


■取得費が不明な場合の特例措置

上場株式等の売却益については、
平成15年(2003年)の税制改正で、
現在の「申告分離課税」に1本化
されました。

しかし、譲渡損益を計算する際には、
その株式の取得費の把握が必要になりますが、
当時まだ大量にあったタンス株などは
相続等で取得したものや
古い時代に購入したもので大部分を占めており、
その取得費を調べることは事実上不可能でした。
そこで、取得費が不明な場合には、
平成13年(2001年)10月1日の終値に80%を掛けた額
を「みなし取得費」として
申告ができるようにしたのが、
みなし取得費の特例です。

この「みなし取得費の特例」計算が
今年の12月31日で期限切れ廃止となります。


■取得費の特例が適用される株式

取得費の特例が適用さる株式は、
平成13年(2001年)9月30日以前
(2001年9月末までに購入した株式を
それ以後相続で取得した株式も含む)
に取得した上場株式で、
現在でも、相続した株式や昔に購入した株式を
そのまま一般口座に保管されているもの、
あるいは、
株券電子化の際に必要な手続きをしないで
信託銀行の特別口座に名義が移ったもの
も対象になります。

取得費が不明あるいは実際の取得費より
みなし取得費の方が高い株式を保有している人は、
年内に「取得費の特例」を使うことで
節税が期待できます。

特例が切れる来年以降、
取得費不明な株式を売却した時の取得費は、
「売却代金の5%」
で計算することになっていますので、
今年と比較して節税効果が大きく異なります。


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2010年9月6日(月)

posted by 税理士西塚智裕 at 11:44| Comment(6) | TrackBack(2) | 所得税

2010年08月25日

離婚の際の財産分与〜分与側への課税

■離婚の財産分与では分与側に課税

離婚の際の財産分与では、
分与を受けた側には
贈与税も所得税もかかりません。

それに対して、
分与した側が
居住不動産や有価証券などで分与義務を履行すると
譲渡所得税の対象となります。

この理屈は、
世間の常識とは相当に異なります。
分与側に税金がかかるなら、
その財産分与契約には
重大な錯誤があったので無効、
という主張で裁判を起し、
結果的に課税処分の取消しも獲得した、
という事例もあります。


■分与側に課税する理屈

財産分与と離婚慰謝料と併せて
5000万円の支払いをするとして、
これに充てるため
取得費2000万円の不動産を
5000万円で売却して支払った人と、
その不動産を
金銭支払いに替えて離婚相手に引き渡した人
とは、
同じ課税関係になければ
衡平ではありません。

不動産の他人への売却には、
確定申告での譲渡所得の申告が必要で、
ここで課税されます。
また、
法解釈上財産分与は
譲渡行為に含まれており、
財産分与だからと言う理由での
特別な配慮規定はありません。

財産分与義務という債務の弁済のために
金銭ではなく、
モノによる代物弁済をしたという理解が
課税の理屈です。


■分与を受ける側の非課税の理屈

婚姻中の夫婦は
共同して財産形成をしているので、
財産が一方だけの名義の場合には、
もう一方には、
共有財産としての
顕在的な持分は認められないものの、
潜在的な持分があり、
財産分与の場合に
それを清算する請求権として
顕在化することになる、
と解されています。

従って、
財産分与請求権という債権の弁済として
離婚相手から金銭や不動産その他の財産を
受け取る、
ということなので、
無償の贈与にはなりません。


■分与側の課税への注意点

自宅を売却した場合には
3000万円の特別控除や
軽減税率の適用がありますが、
これは夫婦や直系血族等の間での取引では
適用できません。

したがって、
離婚のための準備行為として
早々に財産分与による
名義変更をおこなったような場合には、
特別控除が使えない場合が
起こり得ます。

要注意です。


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2010年8月25日(水)
posted by 税理士西塚智裕 at 18:03| Comment(2) | TrackBack(0) | 所得税

2010年08月17日

最高裁二重課税判決の計算

■最高裁二重課税禁止判決の所得計算

年金への所得税と相続税の
二重課税を禁ずる先月7月6日の
納税者逆転勝訴最高裁判決の年金所得の計算は、
次の通りです。

年金収入−相続税評価額=年金所得

また、
被相続人の死亡日を支給日とする
第1回目の年金の相続税評価額は
死亡時の現在価値と一致するはずだから
支給額と同額、としています。
従って、
年金所得はゼロです。
2回目以降のことについては触れていません。


■2回目以降の計算はどうなる

本件の年金は230万円で
10年間に亘り受け取れるものです。
相続税評価額は
年金総額2300万円の6割の1380万円で、
この年金のための
過去の支払済保険料総額は721,977円でした。

2回目以降に
控除できる相続税評価額の総額は、
1380万円−230万円=1150万円で、
これを2回目から10回目までに
配分することになります。
配分額は逓減的になるはずですが、
それを表現する簡単な算式は
あるでしょうか。


■複利現価法で計算すると

この事例に適合する
複利割引率を計算すると年13.704463%となり、
これによる第2回目の控除額は
2,022,787円第3回目1,778,987円
第4回目1,564,571円第5回目1,375,997円、
第10回目は723,986円です。


■これまでの計算方法はどうだった

従来は、
支払保険料の総額に、その年の年金を掛け、
年金総額で割ったものを控除する必要経費
としていました。

本件の場合では
収入が毎年同額なので
必要経費も毎年同額になります。

年金収入−年金対応支払保険料=年金所得

また、
年金収入から控除する支払保険料には、
被相続人の支払保険料も含まれる
と解されております。


■支払保険料の控除方法のあり方

支払保険料の総額を年金収入から差し引くのは
所得税法の定めなので、
最高裁判例によっても変更はありません。
最高裁の新判例は、
必要経費として相続税評価額を控除しているのではなく、
二重課税の排除として
収入から相続税評価額を除外している
と考えるべきです。
よって、控除する支払保険料は、
相続税評価額部分と
それを超過する部分ごとに按分して差引計算するのが
順当です。
なお、
本件判決での生保年金収入は
全額二重課税部分なので、
控除保険料も按分不要で、課税計算外となりますが、
判決はこのことには触れていません。


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2010年8月17日(火)
posted by 税理士西塚智裕 at 10:46| Comment(1) | TrackBack(0) | 所得税

2010年08月04日

禁煙治療費も医療費控除!

■タバコ税の増税は10月1日から

2010年度税制改正で
たばこ税の増税が決まりました。
1本あたり3.5円
(国・地方それぞれ1.75円)が
引き上げられ、
1箱あたり100円程度値上がりする予定です。
増税は今年10月1日からの適用となります。


■禁煙治療も医療費控除の対象に

昨今の喫煙環境が厳しくなっていることに加え、
このたばこ税の増税を受け、
最近愛煙家の間で「禁煙治療」への関心が
高まっているようです。

禁煙治療とは、
医師の指導のもとでニコチン依存症を改善し、
禁煙を実行していくものです。
以前は保険の対象外でしたが、
2006年4月から
医療診療報酬の改定により、
禁煙治療についても
医療保険が適用されることとなりました。

そこで、
タバコ税の増税を機に
禁煙に挑戦している方に朗報です。

禁煙治療にかかった費用も
医療費控除の対象になります。
ただし、
医療費控除を受けるためには、
医療費として認められるものでなければ
なりません。


■医療費として認められるものとは

所得税法施行令では、
医療費控除の対象となるものは主に

1
医師又は歯科医師による診療又は治療
であること。

2
治療又は療養に必要な医薬品の購入であること。

としか規定していません。
解釈すると以下のようになります。

既に病気になっており、
その治療の一環として
禁煙治療を受ける人はもちろん、
病気でなくても、
医師の指導により禁煙治療を受けたのであれば
その禁煙治療費は医療費控除の対象になり、
また、
医者から処方箋をもらって、
ニコチンガムなどの禁煙補助薬を
購入した場合は、
医療費控除を受けることができます。


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2010年8月4日(水)
posted by 税理士西塚智裕 at 12:43| Comment(1) | TrackBack(1) | 所得税

2010年08月03日

最高裁二重課税判決の意義

■最高裁二重課税禁止判決の独自内容

年金への所得税と相続税の二重課税を禁ずる
先月7月6日の納税者逆転勝訴最高裁判決
(長崎地裁は勝訴、福岡高裁は敗訴)の内容は、
勝訴していた長崎地裁の判決と
少し異なります。

地裁は、
年金への課税は
相続税で済んでいるのだから、
所得税で再課税すべきではない、
としたのに対し、

最高裁は、
相続税の課税済み部分は
その後の所得税課税において
重ねて課税してはならない、
です。


■年金についての二つの非課税

所得税法には元々
退職遺族年金非課税の規定がありました。
今回の年金判決で争点だった
「相続取得によるものは非課税」
との規定により、
退職遺族年金以外の遺族の受け取る年金も、
非課税が確認されました。

それでは、
元々の退職遺族年金非課税規定は
特別に法律規定がなくても
よかったことになったのでしょうか。
この疑問は、
被告の国税サイドが反論として
何度も主張していたところでした。


■最高裁判決の独自内容の意味

相続税が課税される相続財産の価額と、
所得税が課税される所得の収入金額とには
一時の一括課税か、何回かの分割課税か、
長期間経過後の課税か、
という理由による相違があります。
その相違からくる金額差の部分にのみ
所得税は課し得る、というのが、
最高裁判決の独自内容です。

その独自内容によって、
先の、二つの年金非課税の疑問に
答えたのです。
即ち、
退職遺族年金は相続課税と無関係に非課税、
相続取得年金は相続課税部分のみ非課税、
という理解です。


■新たな考え方による法解釈

最高裁判決の独自内容の意義は、
相続税は一種の特別な所得税なのだから、
相続税の課税済み分部に
その後の所得税課税が重複してはならない、
と言うことです。

年金について言えば、
従来は、過去に支払い済みの保険料
(被相続人が支払ったものを含む)を
超過して受け取る年金部分が
所得税の課税対象と理解されていました。

今度は、
この支払原価超過分への課税の前に、
相続課税済部分を除外する、と
大きく課税対象に変更を加えたのです。

そして、
この新たな考え方の影響は
遺族年金への課税問題にとどまらず、
相続財産に関わる
その後の所得税課税全体に及ぶことに
なります。


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2010年8月3日(火)
posted by 税理士西塚智裕 at 12:36| Comment(1) | TrackBack(1) | 所得税

2010年08月02日

最高裁「二重課税」判決の射程

年金に相続税と所得税を二重課税するのは
所得税法違反、と
国側敗訴にする最高裁判決が
7月6日に下されました。

■二重課税の意味

相続による財産の取得は、
所得税法における「所得」であるが、
課税は
相続税法に委ねているので、
所得税法では非課税と
定めています。

この非課税規定は、
税法の重要な原理規定なのですが、
その原理を再確認したのが
今次の判決です。


■相続税法での課税の特徴

相続税の課税対象には、
所得税では課税されない
未実現の所得も取り込まれます。
将来取得年金の予定額が
課税対象となったのはそのためです。

類似のものとしては、

@預貯金・貸付金の未収利息等
A3ケ月以内収穫予定の天然果実
B訴訟中の損害賠償金などの債権
C生命保険契約に関する権利
その他があります。

これらが、実現所得となったときには、
相続税での評価額部分を超える額だけが
課税されるべきです。
源泉分離の利子課税などは、
二重課税排除を
確定申告による源泉税の還付で行うとなると、
そうできるようにするための
法改正が必要です。


■二重課税を定める矛盾規定

さらに、もっと重要なことは、
相続取得財産については
相続税で時価課税して、
また、その時価で所得税を二重課税するものが
沢山あるということです。

それは、
不動産や株式などの譲渡性資産です。
相続財産を譲渡するときに、
相続税課税済みの金額部分に
再度課税します。
明らかに二重課税です。

これらの法律内部の矛盾規定は、
この二重課税禁止判決を承けて、
見直されるべき事態に至った
と言うべきでしょう。


■アメリカの相続・贈与税・譲渡税

アメリカの相続税は遺産課税で
贈与税は贈与者課税なので、
相続財産は
死亡時に被相続人が相続人に譲渡
したような扱いになり、
相続人が取得する相続財産に付せられる取得価額は
相続時の時価となり、
二重課税は排除されるようになっています。

民主党は
政権政策で遺産課税を唱えていましたので、
近い将来に米国と同じ制度にするつもりなのか、
関心の湧くところです。


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2010年8月2日(月)
posted by 税理士西塚智裕 at 12:28| Comment(1) | TrackBack(1) | 所得税

2010年07月30日

2重課税〜相続税と所得税

■年金保険への課税の現況

相続税法では、
年金は年金受給権として評価され、
相続財産として課税されます。
その後、
年々の年金受給が始まると、
雑所得として所得税が課税されて
いました。

ただし、
年金で受けとるのではなく、
一時金で
受け取ることにした保険金については、
相続税がかかるだけで、
所得税はかからないことに
なっていました。


■年金と保険一時金の相違

一時金なら非課税ということは
通達に書かれていたのですが、
その通達は、所得税法に、
「相続により取得するものには所得税を課さない」
という規定があったことに
根拠を置いています。

でも、法律には、
年金の場合は課税できる、との規定は
ありませんでした。
国側の解釈は、
相続税と所得税の課税のタイミングが同時のもの
で、
いかにも二重課税が明白なものに限定しての
非課税規定、というものでした。


■長崎からの告発

税理士も、
なんとなくへんだ、と思いつつ、
所得税法の解釈について、
国の言うことに流されていたところでしたが、
長崎の相続未亡人とその関与税理士は、
国の言うことに納得せず、
相続課税後の年金所得に
所得税をかけるのは二重課税である
と主張して
裁判に訴えました。


■裁判の経過は次の通りでした。

平成18年11月 7日 長崎地裁 勝訴
平成19年10月25日 福岡高裁 敗訴
平成22年 7月 6日  最高裁 勝訴

最高裁での二重課税禁止判決は
ニュースで大きく取り上げられましたので、
ご存じのことと思います。


■国税のすばやい対応

最高裁の判決後、
類似のケースには、
過去5年分につき、更正手続により還付し、
もっと古い分については、
立法的に手当てすることを検討する、
と財務大臣が即座に表明しています。

この素早い対応は、
判決への国税庁の真摯な姿勢のように見えますが、
穿った見方からすれば、
判決の及ぼす税制への衝撃を、
年金問題だけに食い止めようとしている思惑にも
思えます。
なぜなら、
相続税と所得税との二重課税は、
年金だけのところにあるわけでは
ないからです。


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2010年7月30日(金)
posted by 税理士西塚智裕 at 12:20| Comment(5) | TrackBack(0) | 所得税

2010年07月29日

居住者・非居住者の判定

居住者か非居住者の
何れかに該当するかによって、
税務上の取り扱いが異なります。


■居住者とは

所得税法上「居住者」とは、
「国内に住所を有し、又は
現在まで引き続いて1年以上
居所を有する個人をいう」
としています(所法2@三)。

一方、
非居住者とは
「居住者以外の個人」をいいます
(所法2一五)。

それでは「住所」の意義は
どのように考えればよいのでしょうか。

民法22条によれば、
「生活の本拠」としています。
具体的には、住まい、仕事、滞在、預貯金、
家族などの状況について総合的に考え、
判断します。

それでも判断しにくい場合には、
OECDモデル条約4条では、
二重住居者について振り分け規定が
あります。


■課税上の取り扱いの違い

日本の税法上の居住者であれば、
国内源泉所得・国外源泉所得について、
日本で課税されます。
一方、
非居住者であれば、
国内源泉所得のみが課税されます。


■具体的な2つの事例

1つめは、武富士事件です。
消費者金融大手の武富士会長夫妻から
会長の長男が
海外法人株の生前贈与を受けましたが、
香港に住所があるので
日本の贈与税は課されないとして
申告しませんでした。

ところが課税庁は
会長の長男を日本の居住者であるとして、
約1,600億円の申告漏れを指摘しました。

東京地裁平成19年5月23日の判決では
納税者勝訴、
一方、東京高裁平成20年1月23日の判決では
納税者敗訴でした。

「生活の本拠」をどのように判断するのかが、
争点となっています。

2つめは、
ハリーポッター事件です。
世界的ベストセラー「ハリーポッター」の
日本語訳を手がけた翻訳家の松岡氏が、
スイス居住者であるとして
日本で20%の源泉徴収のみで
申告をしていませんでした。
2006年に課税庁は、
松岡氏を日本の居住者であるとして、
35億円の申告漏れを指摘しました。

松岡氏が頻繁に帰国し、
出版・PR業務をしていたこと、
日本の会社の社長であったことなどを理由に、
生活の本拠は日本にあると
認定したものです。

その後2007年には政府間協議により、
最終的には日本の居住者であるとの判断が
下されました。
この事件において、
源泉徴収では20%、
申告では約50%(必要経費控除後)と
税率が異なり、
慎重な判断が要求されます。


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2010年7月29日(木)
posted by 税理士西塚智裕 at 11:32| Comment(4) | TrackBack(0) | 所得税

2010年07月23日

ふるさと納税

平成22年度の税制改正において、
所得税の寄付金控除の適用下限額は、
改正前の5千円から
2千円に引き下げられました。

一方、
住民税(道府県民税+市町村民税)においては、
改正はありませんでした。

寄付金の取扱に関しては、
所得税では
所得控除(政党等寄付金は除く)ですが、
住民税は税額控除です
(政党等寄付金の税額控除はありません)。


■住民税の寄付金税額控除の方法

税額控除額は、通常、

{寄付金額の合計(総所得金額等の30%が限度)−5千円}
×10%です(基本控除額)。

寄付金額4万円であれば、
住民税の税額控除額は、3,500円
「(4万円−5千円)×10%」です。

ところが、
寄付金がふるさと納税といった
地方公共団体の場合には、
上記控除額(基本控除額)に
「特例控除額」が加算されます。
この
「特例控除額」とは、
次の算式で求められます。

(寄付金額−5千円)×(90%−所得税の限界税率)
所得税の限界税率とは、所得税の税率です。

なお、
特例控除額は、
住民税所得割額の10%が上限です。


■具体的な税額控除額の計算

例えば、
給与収入700万円で夫婦子2人、
ふるさと納税(寄付金)4万円のケース
(住民税所得割296,000円、所得税の限界税率10%)で
試算してみましょう。

 @住民税の基本控除額
 (4万円−5千円)×10%=3,500円
 A住民税の特例控除額
 (4万円−5千円)×(90%−10%)
  35,000円×80%=28,000円

住民税所得割の10%は29,600円なので
28,000円は限度額の範囲内です。

計算の結果、
税額控除額は31,500円(@+A)となります。

全く同じ条件で同額の寄付金でも、
ふるさと納税など地方公共団体以外の寄付金
であれば、
負担率91.25%(40,000円−3,500円/40,000円)、
一方、
寄付金がふるさと納税であれば

負担率21.25%(40,000円−31,500/40,000円)

です。

さらに、
所得税(実効税率10%)を考慮すると
負担率11.75%と軽減されます。
ふるさと納税の寄付金の有利性が際立っています。

上限はありますが、この負担率は、
所得とふるさと納税の寄付が増えるにつれて
軽減します。


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2010年7月23日(金)
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2010年07月07日

住宅取得等資金の贈与税の非課税のあらまし

住宅取得等資金の贈与税の非課税のあらまし

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2010年7月7日(水)
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住宅資金贈与の非課税枠拡大〜H22年度改正

直系尊属(父母、祖父母など)から
住宅取得等資金の贈与を受けた場合の
非課税枠についての
今年の改正点を整理します。

■1000万円の期限切れ廃止

適用者は少ないと思いますが、
相続時精算課税選択者に適用されていた、
通常の特別控除2,500万円に
さらに住宅資金特別控除額1,000万円を
上積みする制度は
昨年末を以て期限切れとなって
廃止されています。

廃止の理由は、
役割を終えたからというよりも、
もっと広い対象者への制度に
変更したことに拠ります。


■A.昨年立法の非課税制度は生きている

21年1月1日から平成22年12月31日までの間の
住宅取得資金贈与の
非課税枠を500万円とする新設立法が
平成21年6月26日になされましたが、
この法律は
今でもそのまま生きています。

この制度には、
資金受贈者についての要件として
年初で満20才以上の者としているだけで、
所得制限はありませんでした。


■B.昨年立法の非課税制度に対する変更

上記の非課税枠500万円の制度につき、
昨年中すでに適用を受けている人に対して、
平成21〜22年中の累積贈与限度額を
1,500万円と設定し直す改正がなされました。

但し、
平成22年における贈与については、
年初で満20才以上の者との従来要件の外に、
合計所得金額が2,000万円以下であることという
受贈者制限が付加されました。


■C.新規非課税制度を別途立法

@ 平成22〜23年中の贈与  1,500万円
A 平成23年中のみの贈与  1,000万円

受贈者要件は前記のものと同じで、
年初で満20才以上、
受贈年の合計所得金額が2,000万円以下、
です。


■A、B、Cの選択適用関係

昨年中に
500万円非課税制度の適用を受けた人の場合は、
A又はBの選択となります。
Cの選択肢はありません。
追加の受贈は
平成22年中に終わらさなければなりません。
選択の基準は所得制限に抵触するかどうか、
です。

昨年の制度の適用を
受けていない人の場合には、
AとCの選択になります。
BよりもCが確実に有利ですので、
Bの選択肢がないことは
不都合ではありません。
ここでも選択の基準は所得制限です。

なお、
いずれのケースにおいても、
贈与者の側には
特に年齢制限要件はありません。

財務省HP

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2010年7月7日(水)

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2010年06月16日

株主優待利益への課税

■株主優待制度の人気

“株主優待券”を株主に支給する施策は
個人株主作りや
自社製品・施設の宣伝等の
経営目的をもって行われており、
上場企業の実施数は
約4分の1くらいのようです。

所有株数に応じて、
優待内容が変わることが多いものの、
所有株数に完全比例はせず、
概ね名義ごとに付与されるため、
零細株主であるほど
金銭に換算した利回りが
高いようです。

それゆえ個人投資家に人気があり、
個人株主を増やしたい企業は
積極的に実施しています。


■株主への利益還元ではあるが

株主優待による収入の所得区分は、
一見すると配当所得に区分されそうですが、
株主に対して法人が与えた経済的利益
であっても、
法人の利益の有無に関わらず支払われるものは、
いわゆる利益の配当又は剰余金の分配とは
性質が異なるものとされるため、
配当所得からは除かれ、

原則として、雑所得に分類されています。


■雑所得に申告不要の制度はない

従って、
配当所得ならば申告不要の制度があるので
これに該当すれば
申告漏れでも問題はないのですが、
雑所得ということになると、
原則として、
確定申告の対象になります。
ただし、
税額計算をしても納税額が出ない人や、
年末調整の適用のあるサラリーマンの場合で
給与所得のほかの
申告を要する所得が20万円以下というときは
確定申告をしなくても
差し支えありません。


■厳密に考えると申告漏れしていそう

給与以外の申告を要する所得が
20万円近い場合は、
株主優待券などによる所得があることによって、
確定申告をしなければならないことにも
なります。
通常に確定申告する人の場合は、
少額だから申告から除外してもよい、
との規定はないので、
株主優待利益は
申告書に常に反映させるべき
ということになります。


■非課税所得という実態

しかし、
優待の物やサービスが
いくらの所得と評価計算すべきかは
なかなかの難題です。
金券ショップなどで換金した場合は
その金額が所得収入となりますが、
そのような換金価値が不明なものや
優待券等の自己利用では
所得額のみならず所得の事実の補足も
困難です。
株主優待利益を
申告しているという話を聞いたことがなく、
税務統計もみたことがないので、
実態的には
事実上の非課税所得と
なっていそうです。


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2010年6月16日(水)
posted by 税理士西塚智裕 at 12:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 所得税

2010年06月09日

差押え禁止や非課税の趣旨

■子ども手当等の支給と差押さえ禁止措置

子ども手当支給法、高校授業料無償化法
が成立しました。
子ども手当と就学支援金については
非課税所得とされ、
譲渡・差押も禁止です。

非課税の趣旨は、
公共の資金を交付しておいて
他方で所得課税で税金として回収するのでは
交付の意味が薄れるということにあります。

差押さえ禁止も、
滞納税金の回収に充ててしまうようなことのないように、
との趣旨です。

同じような差押さえ禁止債権としては、
児童手当や年金や生活保護費などがあります。


■振り込まれた後の預金への差押さえ

ところで、
差押さえ禁止債権の児童手当13万円が
銀行口座に振り込まれた9分後に
県税事務所がこれを差押さえ、
全部没収してしまったという
鳥取県の事件が平成21年6月にありました。
また、千歳市では
年金への差押さえ事件が起きています。

確かに、
最高裁平成10年2月10日判決で、
差押禁止債権が受給者の預金口座に振り込まれて、
預金債権となると
差押禁止債権としての属性は
消滅してしまうので、
従って
預金に対する差押えは認められることになる、
としています。


■国会でも取り上げられている

鳥取県の事件は訴訟になっており、
当時の財務大臣の与謝野さんも、
児童手当はちゃんと
児童の養育のために使うものであるから、
差し押さえてはならない、
児童の養育のために使えるようにしてやるのが
本来の筋だと、国会で答弁しておりました。

今年の国会でも、菅財務大臣が、
「現金で受け取ればそれは
差し押さえの対象にならなかったんでしょうけれども、
実質上、ほとんど残高のない口座に
振り込まれたものまで、
まさにねらい撃ち的に差し押さえるというのは
法の趣旨に反する」
と答弁しておりました。


■最近の判決の新方向

確かに
最近は違う判決もでるようになっています。
入金するものは年金だけというような
預金口座を差し押さえることは
年金債権を差し押さえていることと
実質的に同じであるから、
年金債権への差押禁止効果は
預金口座にも及ぶとしているものもあります。
平成20年1月の神戸地裁の判決です。


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2010年6月9日(水)
posted by 税理士西塚智裕 at 11:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 所得税

2010年05月26日

早生まれの損

■早生まれ組は、
税制上の有利な控除がいつも1年遅れで、
学齢期に係る扶養控除の場合は
1年分損をする、という
「早生まれは損」の現象は
以前から存在していました。

それが、今年の税制改正によって、
ダブル損になることになりました。


年少扶養親族の扶養控除廃止の改正

今年の税制改正で、
15歳以下の年少扶養親族には
扶養控除の適用がないことになりました。

改正法で、
本来扶養控除の適用開始年齢と考えている
高校1年生のときには、
早生まれの生徒は
判定ではまだ15歳なので
扶養控除の適用を受けられません。

相変わらず1年遅れで、
必要な時に必要な政策的支援が行き届かず、
さらに結果的に
適用できる期間が1年短くなるということが
続いています。
これが第一の損です。


■子ども手当と年少扶養親族

子ども手当を支給するから
年少扶養親族を扶養控除から排除するというのが
新制度の趣旨です。
でも、子ども手当はその支給期間が
中学校修了までの子育ての支援
ということで、
3月の卒業時までの支給で
打ち切りという制度設計になっています。
そのため、
早生まれの高校1年の生徒については、
税法では年少扶養親族として
扶養控除対象外としておきながら、
一方で子ども手当については
支給がありません。

高校1年で、
社会的子育て支援としての子ども手当
もしくは扶養控除の
いずれの恩恵も受けられない、
これが第2の損です。


■放置された不平等に対する真摯な検討を

今年の予算をめぐる国会の議論を記録した
衆議院財務金融委員会の3月1日の議事録をみると、
「早生まれは損」が
今年からダブルの損になる、という指摘が
佐々木憲昭議員から
菅財務大臣に投げかけられていました。
官僚答弁は、
高校の実質無償化が同時進行するので、
負担は緩和されている、
というものでしたが、
菅財務大臣は
「私たちが必ずしも気がつかなかったことを含めて
御指摘をいただいたと思っております。
まさに、佐々木議員がおっしゃったように、
私たちも、こういうことで
一部の人に不利益な扱いにならないように
どうすればいいのか、
ちょっといろいろ工夫が必要かもしれませんが、
PT等で真摯に検討していきたい」
と答弁しました。

衆議院会議録


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2010年5月26日(水)
posted by 税理士西塚智裕 at 10:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 所得税

2010年05月25日

税制適用と年齢〜早生まれは損?

早生まれは1年待たされる

所得控除において、
特定扶養親族や
老人控除対象配偶者や
老人扶養親族に該当する年齢になると
控除額が増える仕組みになっていますが、
この判定は12 月31 日で行います。

したがって、早生まれの人は
同級生がこれらの有利な控除を
受けられることになっても、
1 年間待たされます。

その意味で、早生まれは損なのです。


早生まれは1年分損する

それだけでなく、
早生まれの子を持つ親は
特定扶養控除で
公平に扱われていません。

平成22年までの制度で言えば、
特定扶養控除は
高卒なら高校3年間、
大卒なら高校大学の
7年間の教育費負担の家計への配慮として、
扶養控除額を増やしてくれる趣旨で
設けられていましたが、
1月から3月の間に生まれた早生まれ組は、
高卒なら高校2年生と3年生の2年間しか、
大卒なら大学4年生になった年までの6年間しか
特定扶養控除の適用がありません。

高校や大学を卒業して就職すると
所得が生ずることになり、
所得制限により
扶養親族に該当しないことになるからです。
(浪人して大学入学したり、
大学院に進学したり、就職浪人したり、
の場合には1年分の損は発生しません。)


早生まれは損の波及効果

所得税・住民税以外にも、
国民健康保険料や
国民年金保険料の減免制度、
公営住宅の入居収入基準、
ホームヘルプサービス事業費用負担基準、
母子家庭に支給される児童扶養手当の額
を確定するに当たっての所得基準、などで
特定扶養親族該当・非該当が関わっています。


前政権時代からずっと放置されてきた

これらは
明らかに法の下の不平等です。
ただ、この課税上の不公平について、
過去誰かが憲法違反といって争った
という形跡がありません。
しかし、
1月から3月の早生まれ組は
全体の4分の1を占めており、
量としては大変多く、
この制度的欠陥が認知されてしまうと、
運が悪いから我慢しろと言うことでは
済まなくなり、
世論も容易にこれを是認しなくなるように
思われます。


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2010年5月25日(火)
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2010年04月28日

共有物分割〜税務2

■共有物分割は譲渡とされないという原則

共有物の分割は、
交換行為に類似するものの、
原則として、
税法上は資産の譲渡にはならない
と取り扱われています。

それでは、
甲と乙とが、A土地とB土地とを
それぞれ共同で購入して
共有(持分は甲乙2分の1)していた場合、
共有に係る土地を、分割して、
甲はA土地を乙はB土地を単独所有する
というような時、
これを共有物の分割だからとして、
譲渡がなかったものと扱えるか、
となると
にわかに疑問となりそうです。


■共有物につき前提がある

譲渡とされない共有分割では、

1つの物を2人が共有で所有している

という関係が
前提にあります。

先の甲乙の事例では、
2つのものを2人で共有しています。

甲は
B地の共有持分権を放棄する対価として
効用の異なるA地の単独所有権を取得し、
乙は
A地の共有持分権を放棄する対価として
効用の異なるB地の単独所有権を
取得するということになります。

従って、これには、
分筆登記による
共有分割の場合のような扱いには
できません。

所得税法第58条の
固定資産の交換の特例の適用がない限り、
一般の譲渡として
譲渡所得課税の対象とされます。


■単独から共有への場合も同じ

同じように、
それぞれが
単独に所有していた土地を共有とする場合も、
実質的には、
自己の所有に係る土地の共有持分と
他人が所有する土地の共有持分とを
交換することなので、
本来の譲渡行為に該当します。

この場合、
分筆による分割に対応するような、
隣接地同士の合筆による共有化だったら、
分筆の場合の不課税の論理が
合筆にも当てはまるのではないかという
類推が起きても不思議ではありません。
でも、
それはダメなのです。
所有者の異なる土地は
合筆ができないことになっているからです。
複数の単独所有土地を
一つの共有土地にするには、
それぞれの単独所有土地に、
他の者の共有持分権を
新たに発生させる持分交換を先にして、
合筆対象土地の所有者名義を
同一にしなければならないからです。


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2010年4月28日(水)
posted by 税理士西塚智裕 at 12:38| Comment(2) | TrackBack(0) | 所得税

2010年04月27日

共有物分割〜税務

■共有物分割は交換に近い

1つの土地を
2人が共有で所有しているという関係は、
それぞれが
その共有土地の全部について、
その有する共有持分に応じて
権利を有するということになります。

したがって、
甲と乙とが共有していた
1つの土地をAとBの2つに分割し、
甲がA土地を、乙がB土地を
それぞれ単独で所有することと
なった場合には、

甲は
B土地の部分について有していた
共有持分権を放棄する代償として
A土地を単独所有することになり、

乙は
A土地の部分について有していた
共有持分権を放棄する代償として
B土地を単独所有する

ということになって、

法律的な構成からすれば、
いわば
交換に近いことが行われたと
いえそうです。


■交換とは見ない税法の立場

交換は譲渡の一形態です。
しかし、
共有物の分割は
譲渡に該当するかということになると、
税法上はそういう見解を
とっていません。

譲渡所得は、
資産の値上り益が
譲渡によって実現した時に
一時の所得として課税の対象とされるもの
であることから、
2人の共有に係る1つの物が
その持分に応じて
2つに分割されたということだけで
その資産に係る譲渡所得が実現した
と考えることには
無理があるからです。

共有に係る1つの物を
その持分に応じて
現物で分割した場合には、
その物の全体に及んでいた所有権が
単独所有することとなった
その物の部分に集約されたに過ぎないので、
このような場合における
共有物の分割は
資産の譲渡にはならない
と税法上取り扱われています。


■譲渡がないものとされることの意味

交換は
その特例の適用する旨の申告をして
課税の繰延を受けられるのですが、
共有物の分割の場合は、
譲渡がなかったものとする
という扱いなので、
申告も不要です。

もちろん、
交換特例のための要件である、
1年以上の所有とか、
直前用途と同一用途とか、
という縛りもありません。

土地の分筆による共有分割の場合、
分筆の登録免許税こそかかりますが、
不動産取得税もかかりません。

共有地の分割等


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2010年4月27日(火)


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2010年04月21日

青色控除

青色申告特別控除には
10万円と65万円の
2種類があります。

適用対象所得は、

10万円については
不動産所得、事業所得、山林所得で、

65万円については
事業所得と事業的規模の不動産所得

です。


■控除のときの順序

控除の順序は、
不動産所得、事業所得、山林所得の各所得につき
それぞれ
青色申告承認の要件を満たしている限りで
不、事、山、の順序です。


■なぜか事業規模でないのに65万円控除

不動産所得と事業所得がある場合で、
不動産所得の方は事業的規模ではないので、
簡易帳簿で記帳し、
申告での不動産所得の青色決算書でも
貸借対照表の作成を省略していたとしても、
控除の順序には影響はありません。
あたかも、
65万円控除の適用を受ける資格のない
不動産所得について65万円の控除の適用を
受けているように見える奇妙なところです。


■家内労働者控除の65万円と青色控除

事業所得者が
たまたま内職者などであった場合、
必要経費については
実額計算の結果が65万円に満たない場合には
赤字にならない限りで65万円とする
こととなっています。

この65万円を適用すると、
青色決算書の必要経費の欄には
何も書かれず、
家内労働者控除65万円とでも
書かれるだけです。

家内労働者控除の65万円は必要経費で、
青色申告控除の65万円は
必要経費ではありません。


■帳簿要件等、BS記載等があれば可

65万円の青色申告特別控除は、
「事業」を営む者が、
これらの「事業」につき
備え付ける帳簿書類について、
その所得の金額に係る
一切の取引の内容を詳細に記録等
しているほか、
貸借対照表及び損益計算書を作成している場合
に適用することとされています。

したがって、
青色申告の承認を受けている事業所得者で、
家内労働者控除65万円を必要経費にしたとしても、
そういう損益計算書を作成し、
その上で
貸借対照表を複式簿記で作成していれば
65万円の青色申告特別控除が
受けられるということです。

あたかも、65万円控除を
二重に受けているように見えてしまう
奇妙な現象です。


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2010年4月21日(水)
posted by 税理士西塚智裕 at 21:12| Comment(1) | TrackBack(0) | 所得税

2010年04月07日

特定支出控除とは

超稀少な人々

サラリーマン5500万人のための税制に
特定支出控除という制度があります。
この利用者は極めて少なく、
1000万人に1人の割合でしか
利用されていないので、
利用者に遭遇することは
限りなく困難といえます。

平成20年の利用者数は
たったの6人です。

平成19年で7人、平成18年で9人、
平成17年で13名、平成16年9名、
平成15年10名という状況です。


■特定支出控除とは

サラリーマンにも
確定申告の道を拓くものとして
1987年(昭和62年)に創設されたもので、
給与所得者が特定の支出をした場合、
その年の特定支出の合計額が
給与所得額を超えるときは、
その超える金額が
給与所得控除後の金額から差し引ける、
というものです。

もし、
給与に係る必要経費があるとして、
給与所得控除額よりも少ない金額で
確定申告をしたとしても、
その申告は誤りのある申告として、
給与所得控除額による所得計算に
置きかえる更正処分をされて
税金は還付されます。


■限定的な特定支出

特定支出は、

1)通勤費、
2)転勤に伴う引っ越し費用等、
3)研修費、
4)一定の資格取得費、
5)単身赴任者の勤務地と自宅の往復旅費

の5つだけです。

この5つという特定支出の範囲が
極めて狭いこと、
またその適用にあたっては、
要件が事細かく定められていて
限りなく使いにくいこと、
ということをみていると、
国税庁として
これの利用者を絶対に増やさせない、との
決意を固く持っていることが
自ずと推測されるところです。


■政権交代でどうなるのか

今年の税制改正大綱に
「給与所得控除と特定支出控除を見直す
ことにより、特定支出控除の
選択的適用の増加を通じ、
給与所得者の確定申告の
機会拡大につなげます」
とありました。

ただし、
今年の改正税法の原案には
これに係るものは全然ありませんでした。

言うは易く行うは難し、です。
特定支出控除制度は、
すなわち架空経費控除になっている
給与所得控除問題のことなので、
容易には手がつけられないものです。

※参考

所得税法 第57条の2(給与所得者の特定支出控除特例)
 居住者が、各年において特定支出をした場合において、その年中の特定支出の額の合計額が第28条第3項(給与所得)に規定する給与所得控除額を超えるときは、その年分の同条第2項に規定する給与所得の金額は、同項及び同条第4項の規定にかかわらず、同条第2項の残額からその超える部分の金額を控除した金額とすることができる。
 2 前項に規定する特定支出とは、居住者の次に掲げる支出(その支出につきその者に係る第28条第1項に規定する給与等の支払をする者(以下この項において「給与等の支払者」という。)により補てんされる部分があり、かつ、その補てんされる部分につき所得税が課されない場合における当該補てんされる部分を除く。)をいう。
 ◆1 その者の通勤のために必要な交通機関の利用又は交通用具の使用のための支出で、その通勤の経路及び方法がその者の通勤に係る運賃、時間、距離その他の事情に照らして最も経済的かつ合理的であることにつき財務省令で定めるところにより給与等の支払者により証明がされたもののうち、一般の通勤者につき通常必要であると認められる部分として政令で定める支出
 ◆2 転任に伴うものであることにつき財務省令で定めるところにより給与等の支払者により証明がされた転居のために通常必要であると認められる支出として政令で定めるもの
 ◆3 職務の遂行に直接必要な技術又は知識を習得することを目的として受講する研修(人の資格を取得するためのものを除く。)であることにつき財務省令で定めるところにより給与等の支払者により証明がされたもののための支出
 ◆4 人の資格(弁護士、公認会計士、税理士その他の人の資格で、法令の規定に基づきその資格を有する者に限り特定の業務を営むことができることとされるものを除く。)を取得するための支出で、その支出がその者の職務の遂行に直接必要なものとして財務省令で定めるところにより給与等の支払者により証明がされたもの
 ◆5 転任に伴い生計を1にする配偶者との別居を常況とすることとなった場合その他これに類する場合として政令で定める場合に該当することにつき財務省令で定めるところにより給与等の支払者により証明がされた場合におけるその者の勤務する場所又は居所とその配偶者その他の親族が居住する場所との間のその者の旅行に通常要する支出で政令で定めるもの
 3 第1項の規定は、確定申告書に同項の規定の適用を受ける旨及び同項に規定する特定支出の額の合計額の記載があり、かつ、前項各号に掲げるそれぞれの特定支出に関する明細書及びこれらの各号に規定する証明の書類の添付がある場合に限り、適用する。
 4 第1項の規定の適用を受ける旨の記載がある確定申告書を提出する場合には、同項に規定する特定支出の支出の事実及び支出した金額を証する書類として政令で定める書類を当該申告書に添付し、又は当該申告書の提出の際提示しなければならない。
 5 前各項に定めるもののほか、第2項に規定する特定支出の範囲の細目その他第1項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。



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2010年4月7日(水)
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