2010年09月01日

所在不明の株主への対処

ある個人株主に
株主総会の案内を送ったが、
「あて所に尋ねあたりません」として返送されたが、
安否や転居先を調べる術もなく、
追跡しようがない・・・
こういう場合どうすべきでしょうか。

会社法は以下の手当てをしております。


■通知・催告洩れの免責

まず、
送付先の住所が、
株主名簿又は別途その株主が送付先として
指定した住所の記載と同一である限り、
通知・催告義務を果たしたということで、
通知・催告漏れによる責任は免れます。


■通知・催告義務の免除

もっとも、
所在不明で届かないことは明白なのに、
今後もいちいち通知・催告をせよとは
無駄ではないかともいえそうです。

そこで、
所在不明により
通知・催告が到達しなくなってから、
継続して5年間到達しないときは、
そのような株主に対する通知・催告自体が
不要となります。

厳格な要件ながら
株式自体を消滅させることもできる

所在不明株式の問題は、
大概は以上の処理で足りるはずですが、
いっそ株式自体を処理できないか
とのニーズも出るでしょう。
そこで、
所在不明により通知・催告が不着になってから、
継続して5年間到達せず、かつ、
この株主が継続して5年間
剰余金の配当を受けなければ、
競売あるいは会社又は第三者への売却を
することができます。
そして、競売ではなく、
会社又は第三者への売却の手続を採る場合には、
市場価格がある場合はその価格で、
ない場合には概要の以下の各手続をとります。

@(自社の買い取りに限って)
取締役会にて買取の決議をする、

A
株主において3ヶ月以内に
異議を述べることができる旨の公告
及び株主宛の催告を出す、

B
上記Aの異議申立期間(3ヶ月)が経過し、
異議が出されない、

C
裁判所に対して、売却許可の申立をなし
(買取価格の鑑定の提出を求められる)、
許可決定を受ける、

D
許可決定後は、
売買代金の支払として、法務局へ供託する。

読んでいるだけで
気が重くなられたかも知れませんが、
所在不明とはいえ、
第三者の株式を一方的に処分するためには、
かくも厳格な手続を要するということです。


〒104-0061  東京都中央区銀座3-9-18 東銀座ビル304
税理士西塚事務所   TEL03-6226-5140

2010年9月1日(水)
posted by 税理士西塚智裕 at 11:02| Comment(3) | TrackBack(0) | 企業法務

2010年08月16日

業務委託契約

■業務委託を定めた法律上の規定はない?

業務委託契約とは、
依頼主の業務の一部または全部を
委託先に任せる際に締結する契約
をいいます。

従来から事業者間の取引で
広く結ばれる契約であり、
聞いたことがない方はいないでしょう。

しかし、実は
業務委託契約の中身を定めた法律上の規定は
ありません。

民法は、
典型的な契約として
13種類の契約(典型契約といいます)を
定めておりますが、
業務委託契約という類型はありません。

そのため、
「業務委託契約だから法律上こうなる」
というのではなく、
当該契約の趣旨や中身に照らして、
そもそもいかなる内容の契約なのかが
まず問題とされます。

実際には、
民法上の請負契約、委任契約、それらに近いもの、
あるいは、
両者が混合されたもの等といろいろです。


■請負と委任

因みに、
請負契約は請負人が
ある仕事を完成することを約し、
注文者がその仕事の結果に対して
その報酬を支払うことを内容とする
契約です。

これに対し、委任契約は、
ある事務の処理を
自分以外の他人に任せる内容の契約を
いいます。

請負契約はその目的が結果、成果物の完成
に向けられているのに対し、
委任契約の目的は
委任する事務の遂行そのものにあります。
その違いは報酬の支払われ方、
トラブルがあったときの契約不履行の成否等に
微妙な影響を与えます。

そこで、
具体的トラブルの処理では、
契約書上の文言は勿論のこと、
契約の趣旨に照らして、
民法上手かがりとなる規定を探し出し、
当てはめるということになります。


■雇用の代替手段として用いる場合

ところで、近時、
人件費の削減、雇用に伴う解雇などの
リスクの回避を目的として業務委託とする例が
あります。
しかしながら、
両者の間に使用従属性が認められる場合には、
労働基準法上の労働者として、
同法による規制を受けることがあることに
留意が必要です。

例えば、
業務の遂行について裁量がない、
報酬が時間や日数で算出される、
従業員と同様の業務をしている、
給与所得として源泉徴収票を出している、
労働保険を適用させている等の要素がある場合には、
労働者性が認められる可能性が
高くなります。


〒104-0061  東京都中央区銀座3-9-18 東銀座ビル304
税理士西塚事務所   TEL03-6226-5140

2010年8月16日(月)
posted by 税理士西塚智裕 at 13:02| Comment(2) | TrackBack(0) | 企業法務

2010年07月08日

強制執行の概要

posted by 税理士西塚智裕 at 12:24| Comment(1) | TrackBack(0) | 企業法務

訴訟の先にある解決とは?

「勝訴判決=問題解決」?
例えば、相手が支払いをしない場合、あるいは、立ち退かない場合に、事態を打開すべく訴訟を起こすとします。その場合、勝訴判決さえ出れば、支払われる、あるいは、立ち退くと思っていませんか。
しかし、判決は、あくまで訴えた請求に対して裁判所が下す判断であって、相手があえてこれを無視した場合には、権利の実現のためには、次なる手段が必要です。
強制執行も自己責任で
判決に従わない相手に対しては、裁判所の力を借りて強制的に実現させる手続、すなわち、強制執行をかけることになります。例えば、債権回収の手段として不動産に対して強制執行をかけるならば、不動産を差し押さえて、競売にかけ、売却代金から配当を得ることになります。売掛債権に対する強制執行であれば、その債権を差し押さえ、当該債権の債務者に対して直接取り立て、回収に充てます。
このように、強制執行は、めぼしい相手の財産を自ら見つけ、選択し、しかるべき方式で申し立てなければなりません。裁判所は相手の財産を探し、職権で強制執行をしてくれません。
他方、強制執行の対象となりうる財産が見当たらなければ、判決は事実上絵に描いた餅となります。
判決ばかりが解決ではない
このように、訴訟に勝つことと、権利の実現とはイコールではないのです。
例えば、裁判所から訴訟の途中で減額を内容とする和解勧告があったとします。ここで、満額回答に固執してこれを拒否した場合、相手が「好きにしろ」と開き直れば、仮に所望の判決を得ても、任意の支払はなされず、また、手間暇かけて強制執行をかけても、回収が実を結ぶとは限りません。それならば、当初の和解により、たとえ減額でも相手より任意に支払わせる方が得策なこともあるのです。
また、もともとみるべき財産がない場合には、そもそも訴訟を起こすべきか否か自体を考えざるを得ません。
訴訟のゴールを見極める
このように、権利実現の手段として訴訟提起を起こすにしても、それによりどのようにして権利を実現させるかというゴールを考えなければなりません。


〒104-0061  東京都中央区銀座3-9-18 東銀座ビル304
税理士西塚事務所   TEL03-6226-5140

2010年7月8日(木)
posted by 税理士西塚智裕 at 12:22| Comment(1) | TrackBack(0) | 企業法務

2010年06月07日

何気ない表現にも法の網?

フレーズの拝借にも問題が・・・?

宣伝やスローガンのキャッチコピー等で、
既存のフレーズを拝借、
あるいは、改変することが
問題となることがあります。
これは、主に
著作権侵害の有無という形で現れ、
神経を尖らせる(べき)ところです。

表現の方法や内容が無数ある一方、
参考になる裁判例も少なく、
明確な指針を示すことには
困難を極めますが、
ここでは、考え方の傾向をお示しします。

(1)
短くとも、創作性があれば、
著作権法による保護の対象となりうる
著作権法が保護する著作物は、
法文上「思想又は感情を創作的に表現したもの
であって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に
属するもの」
と定義されていますが、
学術性や芸術性に乏しくとも、
創作性があれば、著作物性が認められ、
それは、短い表現でも同様です。

(2)
但し、短ければ、保護の可能性は狭まる
もっとも、短ければその分、
表現の幅に限界があり、
少しでも変わると
同一性を失いがちであることから、
著作権法による保護の可能性が狭まります。
「ママの胸よりチャイルドシート」
という交通標語を作成して、
テレビCMで放送したことに対し、
「ボク安心 ママの膝より チャイルドシート」
の標語の作者が、
自らの著作権を侵害されたとして
損害賠償請求をしました。
裁判所は、
訴えた作者の標語に著作物性があるとしながら、
両標語を比較し、
「ボク安心」の有無、「膝」と「胸」の違い、
五七五か七五調の違いを挙げ、
共通する「ママの」、「より」、
「チャイルドシート」に著作物性がないとして、
結論としては著作権侵害がないとして、
訴えを却けました。

(3)
著作権法以外の法律に抵触する場合もありうる

以上著作権を中心にお話ししましたが、
それ以外の法律にも留意が必要です。

裁判所は、
Webニュース記事の見出しには、
創作的表現はないとして
著作物性がないとしながら、
これを無断で利用した者に
民法上の不法行為責任(損害賠償)を課する判断
をしました。

また、
陸上自衛隊の「守りたい人がいる」
のコピーのように、
商標登録されている例もありますので、
商標権との関係で要注意です。


〒104-0061  東京都中央区銀座3-9-18 東銀座ビル304
税理士西塚事務所   TEL03-6226-5140

2010年6月7日(月)
posted by 税理士西塚智裕 at 11:04| Comment(1) | TrackBack(0) | 企業法務

2010年04月02日

司法書士の立合責任

■法書士の取引立合い

税理士も時には
不動産取引の契約決済の場面に立ち合うことを
依頼されることがありますが、
司法書士さんの場合は
それが本来の業務です。

司法書士として
不動産取引に立ち合うことは、
その取引の信頼性を
保証するような役回りを
引き受けることになります。
取引当事者はそれで安心できますが、
ほとんど立合料という
特別の報酬を受け取っていない
にもかかわらず、
すごく大きなリスクを
負っているわけです。


■当事者に悪意があるとき

善意の当事者だけなら
リスクは少ないでしょうが、
詐欺師のような人を相手にしたとなると、
責任重大です。

土地所有者になりすました人物との間で
売買契約を締結し、
売買代金を騙し取られた当事者が、
土地所有者と称した相手側について
本人確認作業をした
司法書士及び司法書士法人に対し、
本人確認を誤った過失があると主張して、
損害賠償を求めたという
事件があります。


■司法書士の過失と損害額

司法書士は、
相手が真正な不動産所有者であることを
確認すべきであるにもかかわらず、
偽造の運転免許証を
つぶさに検証することなく安易に信用し、
売買代金を騙し取られる原因を作った
と主張されました。

売買代金は2億円で
登録免許税は262万円でした。


■判決による損害賠償額

判決は、
原告の側にも過失があったとして
過失相殺2割を減じた
1億6千万円余の損害賠償義務を負う
としました。

司法書士には
運転免許証が偽造であるかどうかを見抜く
専門的能力はないのであるから、
過大な要求であるなどと
反論していましたが、
認められませんでした。


■裁判は高裁に控訴されています。

税理士の場合にも
平成の時代になってから、
税理士への損害賠償請求訴訟も
起こされるようになってきており、
過去に買換え特例を適用した事実が
あるかないかについて
税務署に問い合わせる義務があるとされた判決や、
相続税の納付についての
物納手続きの依頼を
延納手続きにしてしまった事案で
2億8千万円余の損害賠償義務を
課せられた判決があります。

専門家の責任は重くなっています。


〒104-0061  東京都中央区銀座3-9-18 東銀座ビル304
税理士西塚事務所   TEL03-6226-5140

2010年4月2日(金)
posted by 税理士西塚智裕 at 17:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 企業法務

2010年04月01日

賃貸経営〜滞納者の対処

■鍵の交換は確かに即効的ではあるが・・・

不動産の賃貸経営で避けられないのは、
借主の賃料滞納と明渡しの問題です。

長期間にわたり
賃料を滞納する借主に対しては、
賃貸借契約を解除の上、
明渡請求をなし、
それでも応じなければ
裁判を起こすことになろうことは、
大方察しがつくことでしょう。

しかし、建物賃貸借について、
より手っ取り早い方法として、
こちらで鍵を替えて、
借主を締め出す方法を聞いたことがある、
あるいは、現にやったことがある
という方もおられるかも知れません。


■自力救済の禁止

しかし、これは、
法治国家である我が国では
問題ありと言わざるを得ません。

すなわち、
自力救済禁止の原則から、
仮に自らの権利が侵害されても、
その回復は、自らの実力行使ではなく、
司法手続に委ねて図らねばならない
とされております。

もっとも、かつては、
借主は賃料を滞納している手前、
それを問題だとして訴えることは
なかったかも知れません。

しかし、
今日の権利意識の高まりの表れとして、
このような手法を問題視し、
司法の場で責任追及する事例が
出てきました。


■損害賠償の対象に

そして、本件建物内の
動産類の撤去の機会を与えず、
明渡しの要否について判断ができず、
鍵の交換を承諾又は容認したとは
認められない事情の下でなされた鍵の交換
について、借主の占有権を侵害する自力救済で、
違法であるとして不法行為が成立し、
貸主の損害賠償責任を認める
という裁判例が出されました。


■刑事罰の対象になりうる

また、
家賃債務の保証業者による
悪質な取立てによる弊害を背景に、
これを刑事罰で取り締まろうという動きも
出て来ました。

すなわち、借主に無断で鍵を換えて
部屋に入れなくしたり、
深夜や早朝に家を訪れて
督促したりすること等の行為を禁止し、
これに違反すれば
2年以下の懲役または
300万円以下の罰金を科し、
悪質な事例には両方を科すという
厳しい内容の法案が
今国会で提出されました。

このような現状からすれば、
鍵の交換という手段は
もはや禁じ手と心得るべきです。


〒104-0061  東京都中央区銀座3-9-18 東銀座ビル304
税理士西塚事務所   TEL03-6226-5140

2010年4月16日(金)
posted by 税理士西塚智裕 at 02:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 企業法務

2010年03月24日

「まだ最高裁がある」  とは本当か?

三審制とは言うものの・・・

我が国の裁判では、
いわゆる三審制が採られております。
第一審が地方裁判所ならば、
控訴審が高等裁判所、
上告審が最高裁判所です。
しかし、
民事裁判は特にそうですが、
ほとんどの場合では、
最高裁判所に至らずに決着せざるを
得ません。


事実審と法律審

それは、
第一審・控訴審と
上告審における大きな違いに
由来します。
我が国の裁判では、
第一審、控訴審が事実審、上告審は法律審
と言われております。

裁判の事実認定をするのは
事実審だけであり、
上告審は原審(事実審)の
適法に確定した事実に拘束されるのが
原則です。

したがって、
上告理由となりうるのは、
憲法の解釈の誤りその他憲法違反があること、
その他の特定の事由のあること、
または判決に影響を及ぼすこと
明らかなる法令の違反があることであって、
事実認定の誤りは上告理由とはなりえません。

その一方、
民事裁判での争点は、
ほとんどが事実認定に関する争いです。
例えば、
貸金に関する裁判ならば
返済約束の事実の有無、
損害賠償請求ならば
問題とされる行為自体の有無
あるいは相手方の過失の有無といった
事柄です。

しかし、それらの判断に不服があっても、
最高裁判所では
それ自体を理由に
上告を受け付けてもらえません。


あくまで第一審が主戦場

因みに、
民事裁判における控訴審は、
第一審で集めた資料を前提として、
その上に控訴審で集めた資料を積み重ねて判断する
という方法が用いられています
(続審制といいます)。

すなわち、
控訴審の口頭弁論は、
第一審のそれの継続としてみられ、
当事者は控訴審で
第一審における資料を提出するとともに、
新しい資料を提出することができます。
しかし、
あくまで続きは続きであり、
第一審で出てきた資料が前提となり、
一度判決が下されていることの重みは大きく、
第一審により重点が置かれます。
したがって、
実際裁判に遭遇した場合には、
あくまで第一審こそが主戦場
という心構えで臨むべきです。


〒104-0061  東京都中央区銀座3-9-18 東銀座ビル304
税理士西塚事務所   TEL03-6226-5140

2010年3月24日(水)
posted by 税理士西塚智裕 at 13:54| Comment(1) | TrackBack(0) | 企業法務

2010年03月17日

支払督促

■支払督促とは?

債権回収における法的手段の一つとして
支払督促があります。

支払督促とは、
債権者の申立てに基づき、
債務者に
金銭の支払等をするよう督促する旨の
裁判所書記官の処分をいいます。

支払督促は、
定義からお分かりのように、
金銭請求にのみ使えます。


■手続の概要

相手方の住所を管轄する簡易裁判所に
申立書を提出すると、
裁判所は申立書に不備がないか等を
審査します。
審査が通れば、
裁判所より相手方宛に
支払督促が送達され、
2週間以内に相手方から
異議申立てがなければ、
更に
仮執行宣言付支払督促の申立を
裁判所に行います。
そして、
2週間以内に相手方から
仮執行宣言付支払督促に対しても、
異議申立てがなかった場合には
仮執行宣言付支払督促が確定し、
強制執行のお墨付き(債務名義といいます)
が得られます。

もし、上記で
相手方から異議が出た場合には
通常訴訟に移行されることになります。


■支払督促の特長とは?

このように、
支払督促は、
通常訴訟のように相手方の反論も受けつつ、
主張や証拠を応酬した末に
判決を得る必要もなければ、
公正証書のように相手方の協力を得て、
公証役場で作成する必要もなく、

書面審査だけで
簡単に債務名義を得られます。
また、
裁判所への手数料も
通常の裁判の約半分と大変安価です。

支払督促は、
いわば安い、早い、実効的な法的手段
です。


■支払督促も万能ではない

しかし、
支払督促が向かない場面はあります。
それは、
債務者の方で
支払義務自体を争っている場合です。
この場合、
相手方は
支払督促に異議を出すのは確実であり、
通常訴訟に移行するタイムラグが
無駄となりますので、
むしろ初めから
通常の訴訟を提起すべきなのです。
また、
異議により移行される通常訴訟は、
相手方の住所を管轄する裁判所で
行われます。
お互いが
同一ないし近接した地域ならばともかく、
相手方が遠隔地にある場合には、
相手方の裁判所に出向いて
弁論期日を重ねるという大きな負担を
被ります。

このように、
債権回収の手段に
支払督促が有効な場面かどうかを
よく検討する必要があります。

支払督促(最高裁判所のHP)

支払督促とは、
金銭,有価証券,
その他の代替物の給付に係る請求について,
債権者の申立てにより,
その主張から請求に理由があると
認められる場合に,
支払督促を発する手続であり,
債務者が2週間以内に
異議の申立てをしなければ,
裁判所は,債権者の申立てにより,
支払督促に仮執行宣言を付さなければならず,
債権者はこれに基づいて
強制執行の申立てをすることができます。

手続の特徴は以下の通りです。

●請求の対象は、
金銭の支払又は有価証券
若しくは代替物の引渡しを求める場合
に限ります
(不動産賃貸借の滞納借主を例にとれば、
未払賃料の請求には使えますが、
明渡請求には使えません)。
●相手の住所地を管轄する
簡易裁判所の裁判所書記官に申し立てます。
●書類審査のみなので,
訴訟の場合のように審理のために
裁判所に来る必要はありません。
●手数料は,訴訟の場合の半額です。
但し、
債務者が支払督促に対し異議を申し立てると,
請求額に応じ,
地方裁判所又は簡易裁判所の
通常の民事訴訟の手続に移行します。


〒104-0061  東京都中央区銀座3-9-18 東銀座ビル304
税理士西塚事務所   TEL03-6226-5140

2010年3月17日(水)
posted by 税理士西塚智裕 at 11:33| Comment(0) | TrackBack(1) | 企業法務

2010年03月05日

定期借家契約の「更新」?

■定期借家契約に「更新」はあり得ない

定期借家契約を結んだが、
借り手が賃料の支払もよく、
利用態様も問題がないので、
ずっと借りて欲しいという場合には、
契約を更新することが
できるのでしょうか。

そもそも、定期借家契約とは、
契約の更新がないことを特約した
建物の賃貸借契約ですので、
定期借家契約を更新することは
いわば概念矛盾となります。

したがって、
引き続き契約関係を継続しようとすれば、
定期借家契約が終了する際に、
当事者間の合意により
同一内容の定期借家契約を
結ぶことはできます。

これは、あくまで更新ではなく、
再契約ということになります。

そうである以上、
期間満了後に同一内容の定期借家契約を
締結するにあたっては、
契約の手続を一からやり直す
ことになります。

つまり、
契約の更新がない旨の書面による
事前説明を行い、
さらに契約期間が1年以上の場合には、
期間満了の都度、
期間満了による賃貸借契約の終了を通知する
必要があります。

これを怠ると、
定期借家契約は無効となり、
通常の借家契約として再契約したこととされ、
正当な理由がなければ
期間満了による契約の終了ができず、
自ずと立退料の支払いの問題も出てきます。


■再契約を予定する契約書における注意点

ところで、
実際の契約書には、
あからさまに
更新をしないことを示すことで生じる
空室や賃料下落のリスクを避けるべく、
契約書で再契約を予定する条項や
再契約事由(あるいは再契約拒否事由)
を設けるというパターンが見られます。

しかし、
契約の内容や運用の実質が、
定期借家契約から離れ、
通常の借家契約に近づくと、
当初目的としたはずの
定期借家契約としての効力が
生じない場合があります。

例えば、
契約書に記載の
再契約拒否事由に該当しない、
あるいは、
再契約事由に該当するのに
更新を拒否する場合には、
当然に再契約の効力が生じます。

そして、
再契約における
契約更新がない旨の事前説明がないので、
通常の借家契約となります。

そして、
再契約拒否事由が限定的に書かれており、
借り手に落ち度さえなければ
再契約に応じるような契約書
になっている場合には、
更新がない旨との事前説明と矛盾するため、
実質的には更新がない旨の説明がないのと
同様だとして、
定期借家契約は無効となり、
通常の借家契約が成立すると
解されることがあります。

※参考

1 定期建物賃貸借に関する条文(定期借家法。以下同じ)
第38条  期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第30条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第29条第1項の規定を適用しない。
2  前項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。
3  建物の賃貸人が前項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。
4  第1項の規定による建物の賃貸借において、期間が1年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の1年前から6月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から6月を経過した後は、この限りでない。
(略)
6  前2項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
2 通常の借家契約の終了についての条文
(建物賃貸借契約の更新等)
第26条  建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。
2  前項の通知をした場合であっても、建物の賃貸借の期間が満了した後建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同項と同様とする。
3  (略)
(解約による建物賃貸借の終了)
第27条  建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から6月を経過することによって終了する。
2  前条第2項及び第3項の規定は、建物の賃貸借が解約の申入れによって終了した場合に準用する。
(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第28条  建物の賃貸人による第26条第1項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
(強行規定)
第30条  この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。



〒104-0061  東京都中央区銀座3-9-18 東銀座ビル304
税理士西塚事務所   TEL03-6226-514

2010年3月5日(金)
posted by 税理士西塚智裕 at 23:14| Comment(0) | TrackBack(1) | 企業法務

2010年02月05日

景品表示法〜景品に関する規制


懸賞や景品の金額に制限があることを
ご存知ですか?

不当景品類及び不当表示防止法は、
景品類の最高額や総額等を規制し、
過大な景品類の応酬による
不健全な競争を防止しています。

規制を受ける「景品類」とは、

(1)
顧客を誘引するための手段として、
(2)

事業者が自己の供給する
商品・サービスの取引に付随して提供する、

(3)
物品、金銭その他の経済上の利益
をいいます。

値引きやアフターサービスは
「景品類」に含まれません。

そして、
「景品類」の提供方法により、
「懸賞」、「総付景品」に大別され、
各々景品類の限度額等が定められています。
消費者庁は、
違反した事業者に対し、
景品類の提供に関する事項を制限し、又は
景品類の提供を禁止することができます。


■懸賞にかかる規制とは?

「懸賞」とは、
商品・サービスの利用者に対し、
偶然性(くじ等)、
特定行為の優劣(クイズ等)
等によって
景品類を提供することをいい、
複数の事業者が参加して行う「共同懸賞」、
それ以外の「一般懸賞」と分けて
規制されています。

一般懸賞における規制は、

@
最高額が、取引金額が5,000円未満であれば
その20倍、
5,000円以上であれば
10万円を限度とし、
かつ、
A
総額は、
懸賞にかかる取引予定総額の2%が
その上限となります。

共同懸賞の場合には、

@
最高額が一律30万円で、かつ、
A
総額は、
懸賞にかかる取引予定総額の3%が
その上限となります。


■懸賞によらない景品等の場合は?

これに対し、
一般消費者に対し、
「懸賞」によらずに提供される景品類を
「総付景品(そうづけけいひん)」
といいます。

商品・サービスの利用者や来店者に対して
もれなく(申込順、先着順も含む)提供する
商品・サービスがこれです。

こちらは、
取引価格が1,000円未満であれば200円、
1,000円以上であれば
その2割が上限となります。


■その他

なお、
新聞、雑誌、不動産、医療について、
別途規制があります。

実際の計画で、
規制に該当するか否かを判断するのは、
意外と難しいので、
消費者庁に問い合わせるか、
以下のHPをチェックすることをお勧めします。

■ 景品表示法


〒104-0061  東京都中央区銀座3-9-18 東銀座ビル304
税理士西塚事務所   TEL03-6226-5140

2010年2月5日(金)
posted by 税理士西塚智裕 at 10:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 企業法務

2010年01月25日

売掛債権の消滅時効は2年

■売掛債権の消滅時効は2年

売掛債権について、
請求書を出したのに、
相手方から支払ってもらえずに
時間ばかりが経過すると、気になるのは
消滅時効です。

因みに、生産者・卸売又は小売商人の
売掛債権の消滅時効は2年です。


■債務を承認すればそれでよいが

さて、こちらの請求に対し、
相手方がしばらく待って欲しいと
言ってきた場合には、
書面で少なくとも
自ら負っている債務の内容、
金額を確認する一筆を取り付けることが
時効を中断させるための証拠として
必要です。
但し、
これで今後消滅時効がなくなるわけでなく、
中断時から新たに2年の
消滅時効が進行します。


■請求書さえ出せば足りるか?

これに対し、
相手方があくまで無視した場合には
どうでしょうか。
ただ手をこまねいて
時間の経過を待っていてはまずいことは
お分かりのことと思います。

とりあえず、請求書を出せば、
権利行使をしているので、
消滅時効は中断するのではないか。
そう考える方もおられることでしょう。

しかし、それでは
消滅時効は止まりません。


■内容証明郵便ならば十分なのか? 

請求書だけで不足ならば、
内容証明郵便を出せばよいのではないか
とお思いの方もおられるでしょう。
しかし、残念ながらこれも誤りです。

消滅時効を中断させるのに
最も確実な請求とは、
裁判を提起し、勝訴判決を得ることに
他なりません。

なお、6ヶ月のブランクをおかずに、
請求をかけ続ければ、
裁判を起こさなくとも、
時効は進行しないのではないかと
お思いの方がおられるかもしれまんが、
それは、法律の知識がおありの方、
あるいは、長年経理を担当されている方に
陥りがちな誤解です。

正確には、
消滅時効の期間内に督促をかけ、
そこから6ヶ月以内に裁判を起こせば、
仮に裁判を起こした時点で
消滅時間を過ぎていても、
時効が中断しますが、
逆にその期間内に裁判を起こさなければ、
やはり時効は中断されません。


〒104-0061  東京都中央区銀座3-9-18 東銀座ビル304
税理士西塚事務所   TEL03-6226-5140

2010年1月25日(月)
posted by 税理士西塚智裕 at 21:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 企業法務

2009年11月18日

自社商品の引き揚げ時の注意点〜債権回収

■代金未払の自社商品の引き揚げ

自社商品を掛け売りしたが、
支払期日が来ても支払がなく、
問い詰めても
「もうちょっと待ってくれ」と
全くのれんに腕押し。

そうこうするうちに、
その売掛先の業績が悪く、
倒産の噂も聞こえてきた。
他方、
自社商品が一定期間は
倉庫に保管されていることも
分かっている。

そのような場合に、
訴訟や差押えといった
法的措置によらない、
手っ取り早い方法は、
自社商品を管理する倉庫等を訪れ、
自社商品を引き揚げるという
方法です。

■「うちの商品を引き揚げて何が悪い?」

ここで注意すべき点は、
窃盗罪という勇み足に
ならないようにすることです。
もっとも、
自社の商品を引き揚げて
なぜ窃盗なのかという疑問が
出てくるかもしれません。

代金の完済までは
所有権を留保するという契約ならば、
ますますそういう思いに
駆られるかも知れません。

しかし、
窃盗罪が処罰する行為は、
一言で言えば
「相手の占有を奪う行為」で、
所有権を侵害する行為
ではありません。
仮に所有権が手許に残っていても、
相手方が事実上
その物を支配する状態、
つまり、占有状態がある場合には
相手方の意思に反して
奪い返すことはできないのです。


■相手からの了承を取り付ける

したがって、
商品の引き揚げにあたっては、
担当者に簡潔に用件を伝え、
了承を得てこれを実行すれば
よいことになります。

そして、
引き揚げた商品の処理としては、
赤伝を切ってもらうこと、
つまり、
商品売買の合意解除をします。
あるいは、
未払代金債務の
代物弁済として処理することでも
よいでしょう。


■管理者がいなかった場合は? 

これに対し、
担当者がいない場合、
明確に拒否された場合、
鍵が掛かって入れない場合には、
商品の引き揚げは
断念せざるを得ません。


〒104-0061  東京都中央区銀座3-9-18 東銀座ビル304
税理士西塚事務所   TEL03-6226-5140

2009年11月18日(水)
posted by 税理士西塚智裕 at 14:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 企業法務

2009年10月23日

借家人の権利〜地主・借地人・借家人

■借地上の借家人の権利の不安定

借地上の建物の借家人は、
大家さんである借地人の
地代滞納などのため、
借地契約解除という場合に遭遇すると、
建物賃借人としての権利が
保護されないので、
地主さんから
即刻明渡し請求されることに
なりかねません。


■不動産評価でも同じ

この借家人の権利が
地主の権利に及んでいないということは
財産評価でも確認できます。

自用地価格の評価   100%
借地権割合      60%
借家権割合      30%

とした場合、

@
これが借地だったら

借地人権利価格    60%
地主の権利価格    40%

A
これが貸家用土地だったら

借家人の権利価格   18%
大家の権利価格    82%

B
これが借地上の貸家だったら

地主の権利価格    40%
借家人の権利価格   18%
借地人大家の権利価格 42%

と一般に評価されます。

これを分析すると

地代収受権・担保設定権をもつ
地主の権利価格は
常に土地時価の40%で、
家とその敷地を利用する借家人の権利価格は
常に土地時価の18%(60%×30%)です。

土地の利用者としての
借地人の権利価格<借地権価格>
は60%ですが、
借地人が土地利用形態を
自用から貸家にすると
土地利用権は
家賃収受権と
建物敷地利用権(60%=42%+18%)
とに分化してしまいます。


■地主の権利価格は不変

借家人の敷地利用権18%による侵食は、

地主  18%×40%= 7.2%
借地人 18%×60%=10.8%

というように
地主も借地人も
その影響をうけてもよさそうですが、
影響を受けるのは
大家である借地人の権利価格だけ
です。

借地上の建物賃借権により生ずる
借家人の敷地利用権は
借地人に対しては及ぶものの
土地所有者の地主には
及んでいないので、
それが評価の計算式に
反映していると言うことです。

土地家屋の評価

借地権の評価

貸宅地の評価

貸家建付地の評価

貸家建付借地権等の評価

借家権の評価


〒104-0061  東京都中央区銀座3-9-18 東銀座ビル304
税理士西塚事務所   TEL03-6226-5140

2009年10月23日(金)
posted by 税理士西塚智裕 at 11:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 企業法務

2009年10月22日

借地契約の地代不払による 解除とテナントへの影響

■地主からの突然の明渡請求

店舗として
建物を賃借していたところ、
その敷地の地主から、突然、
建物所有者(借地人)が
地代を支払わなかったので
借地契約を解除する、
よって
店舗を明け渡せという通知が
来たとします。

この場合、
建物の借主は、
家賃を支払う等契約に
違反していないとしても、
建物所有者の事情で
明け渡しに応じなければ
ならないのでしょうか。


■地主の明渡請求は拒否できない

この問いに対する答えは、
残念ながら
その通りといわざるを得ません。

借地上の建物を賃借している場合、
借地契約が
賃料の不払のために解除されたときは、
建物の借主は
土地の所有者には
対抗できません。


■土地の所有権と建物の賃借権の性質

この結論は、
土地の所有権と
建物の賃借権の
権利の強さの違いが原因です。

所有権は、
民法上物権の典型とされ、
地主は借地人であろうと
誰であろうと、
自分が自由に使用収益する権利
を持っていることを主張できます。

これに対し、賃借権は、
民法上債権の一つとされ、
所有権のような物権と異なり、
賃貸借契約の当事者間でのみ
効力を生じます。

そのため、
借家人がいくら建物の賃借権を
主張しても、
借家契約に対して
第三者である地主には
建物の使用収益権を
主張できません。

よって、
借地契約が解除された場合は、
地主は、
建物所有者である借地人だけでなく、
借家人に対しても
建物の収去と土地の明渡しを
請求できます。
その結果、
借家人の建物の賃借権も、
借地権の消滅とともに
その存立の基礎を失い消滅します。


■その予防策とは? 

予防策としては、
土地と建物の所有者が
同じかどうかを登記簿で確認し、
もしも別々であれば、
建物所有者の経済的状況の把握に
努めるしかありません。
そして、
建物賃貸人が行方不明になり、
あるいは、
経済的状況が悪くなった場合には、
地主に地代の支払状況を確かめ、
不払いの際には
自ら代払いすることを
申し出る等の対策が
必要になります。


〒104-0061  東京都中央区銀座3-9-18 東銀座ビル304
税理士西塚事務所   TEL03-6226-5140

2009年10月22日(木)
posted by 税理士西塚智裕 at 11:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 企業法務

2009年09月17日

特例民法法人〜新公益法人制度

新公益法人制度の
根拠となる法律3本が
平成18年5月成立、
平成20年12月1日から施行
されています。

この3本の法律は、

@
一般社団・財団法人に関する法律
(法人法)

A
公益社団・財団の認定等に関する法律
(認定法)

B
従来の公益法人に係る新制度への
移行手続きに関する法律
(整備法)

からなります。


(1)新公益法人制度の骨子

新制度では、
公益法人の設立は、
従来の主務官庁による許可主義から
準則主義に改められました。
具体的には、

@
法人法の要件を満たせば、
登記のみで一般社団・財団法人を
設立することが可能となり、

A
設立された一般社団・財団法人のうち、
認定法に定められた基準を
満たしていると認められる法人は、
公益認定を受けて
公益社団・財団になることが
できます。


(2)既存の公益法人はどうなったのか

既存の公益法人(社団・財団)は、
新制度の施行(平成20年12月1日)と同時に
「特例民法法人」となりました。

そして、
法律の施行から5年以内
(平成25年11月30日まで)に、
公益社団・財団法人への移行認定
(2階に上がる)
又は
一般社団・財団への移行認可
(1階に下りる)
の申請をしなければなりません。

申請を行なわなかった場合、
認定又は認可が得られなかった場合は、
解散となります。

なお、
特例民法法人の間(移行期間5年間)は、
運営及び法律の適用関係は
従前のままです。


(3)公益法人(2階に上がる)への移行

特例民法法人が公益認定を受けて
「公益社団・財団法人」になるためには、
定款の内容等が法人法及び認定法に
適合することが前提にありますが、
少なくとも、認定基準の次の3条件を
クリアーしないと厳しいと考えられます。

@
収支相償であること
(公益事業で儲けてはいけない)

A
公益目的事業比率が50%以上であること
(公益事業に要する費用が事業費
及び管理費の合計額の5割以上であること)

B
遊休財産額が1年分の公益目的事業費相当額
を越えないこと。


(4)一般法人(1階に下りる)への移行

特例民法法人から
一般社団・財団法人への移行は
比較的容易ですが、
最大の障害は、
法人の移行時の純資産額を基礎に計算した
「公益目的財産額」がある法人にあっては、
公益目的財産額に相当する金額を
公益の目的のために消費していく
実行性のある計画(公益目的支出計画)を
作成しなければならないことです。

※ 公益法人制度のパンフをパソコンで


〒104-0061  東京都中央区銀座3-9-18 東銀座ビル304
税理士西塚事務所   TEL03-6226-5140

2009年9月17日(木)
posted by 税理士西塚智裕 at 10:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 企業法務

2009年07月30日

普通株とは?種類株式とは?

ほんの十数年前までは、
株式と言えば

「額面株式」と
「無額面株式」が
あるぐらいで、
その株式に
どんな違いがあるかと言えば、
株券に券面額があるかないか
の違いで、

株式に内在する権利、
@配当金をもらう権利
(配当受領権)、

A株主総会に参加する権利
(議決権)、

B会社が解散・清算した場合に
残った財産をもらう権利
(残余財産分配請求権)

などには
違いはありませんでした。
あえて、
株式の権利に違いがある株式が
存在していたと言えば、
それは、「譲渡制限株式」
くらいです。
しかし、その株式も
譲渡の制限があるだけで、
上記3つの権利は、
欠けることなく持っていました。
したがって、
「普通株」という名の株式は
存在しませんでした。


(1)普通株の存在

しかし、その後、
旧商法時代においても
権利の内容を異にする株式、
優先株
(配当を優先的にもらう権利のある株式)、
劣後株
(配当より経営権を優先する株式)、
議決権制限株、
拒否権付株
(黄金株、全議案に拒否権)
などの発行が容認され、
会社法になってからは、
さらに多様な権利の内容の異なる株式、
いわゆる種類株式の発行が
定款変更によっていつでも
可能になりました。
そこで、
普通株の存在は、
上記3つの権利を
何ら制約なく行使できる株式を
「普通株」と呼び、
それ以外の株式との違いを
明らにすることにあったようです。
株式市場で売買されている株、
そして、未上場の中小企業の株の
殆どがこの「普通株」です。


(2)種類株式発行の目的

上場会社にあっては、
種類株式発行の目的は
ファイナンス(資金調達)
です。

一方、
中小企業にとっては、
オーナー社長の相続対策、
あるいは、
後継者の経営権確保を
目的に発行されます。
しかし、
議決権制限株、拒否権付株といった
種類株を発行しなければ
経営権がスムーズに移譲できないこと
の方が問題かもしれません。


(3)種類株式の相続・贈与の評価

一定の種類株式については、
5%相当額の評価減があります。
しかし、
減額したその5%相当額は、
それ以外の株式(普通株を含む)
の評価額に加算して評価しますので、
株式全体の評価額は
変わりません。
なお、
拒否権付株式(黄金株)は、
普通株式とその評価に差異はありません。

※ 参考(国税庁HP等)

配当優先の無議決権株式の評価(PDF)

社債類似株式の評価(PDF)

拒否権付株式の評価(PDF)

無議決権株式の評価
の取扱いに係る選択届出書



〒104-0061  東京都中央区銀座3-9-18 東銀座ビル304
税理士西塚事務所   TEL03-6226-5140

2009年7月30日(木)
posted by 税理士西塚智裕 at 17:21| Comment(3) | TrackBack(1) | 企業法務
当事務所へのお問合せは、
税理士西塚事務所
TEL : 03-6226-5140
ウェブサイトURL:http://www16.ocn.ne.jp/~nisizuka/
メールアドレス:nishizuka@nishizukajimusho.com