2010年07月30日

2重課税〜相続税と所得税

■年金保険への課税の現況

相続税法では、
年金は年金受給権として評価され、
相続財産として課税されます。
その後、
年々の年金受給が始まると、
雑所得として所得税が課税されて
いました。

ただし、
年金で受けとるのではなく、
一時金で
受け取ることにした保険金については、
相続税がかかるだけで、
所得税はかからないことに
なっていました。


■年金と保険一時金の相違

一時金なら非課税ということは
通達に書かれていたのですが、
その通達は、所得税法に、
「相続により取得するものには所得税を課さない」
という規定があったことに
根拠を置いています。

でも、法律には、
年金の場合は課税できる、との規定は
ありませんでした。
国側の解釈は、
相続税と所得税の課税のタイミングが同時のもの
で、
いかにも二重課税が明白なものに限定しての
非課税規定、というものでした。


■長崎からの告発

税理士も、
なんとなくへんだ、と思いつつ、
所得税法の解釈について、
国の言うことに流されていたところでしたが、
長崎の相続未亡人とその関与税理士は、
国の言うことに納得せず、
相続課税後の年金所得に
所得税をかけるのは二重課税である
と主張して
裁判に訴えました。


■裁判の経過は次の通りでした。

平成18年11月 7日 長崎地裁 勝訴
平成19年10月25日 福岡高裁 敗訴
平成22年 7月 6日  最高裁 勝訴

最高裁での二重課税禁止判決は
ニュースで大きく取り上げられましたので、
ご存じのことと思います。


■国税のすばやい対応

最高裁の判決後、
類似のケースには、
過去5年分につき、更正手続により還付し、
もっと古い分については、
立法的に手当てすることを検討する、
と財務大臣が即座に表明しています。

この素早い対応は、
判決への国税庁の真摯な姿勢のように見えますが、
穿った見方からすれば、
判決の及ぼす税制への衝撃を、
年金問題だけに食い止めようとしている思惑にも
思えます。
なぜなら、
相続税と所得税との二重課税は、
年金だけのところにあるわけでは
ないからです。


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2010年7月30日(金)
posted by 税理士西塚智裕 at 12:20| Comment(5) | TrackBack(0) | 所得税

2010年07月29日

居住者・非居住者の判定

居住者か非居住者の
何れかに該当するかによって、
税務上の取り扱いが異なります。


■居住者とは

所得税法上「居住者」とは、
「国内に住所を有し、又は
現在まで引き続いて1年以上
居所を有する個人をいう」
としています(所法2@三)。

一方、
非居住者とは
「居住者以外の個人」をいいます
(所法2一五)。

それでは「住所」の意義は
どのように考えればよいのでしょうか。

民法22条によれば、
「生活の本拠」としています。
具体的には、住まい、仕事、滞在、預貯金、
家族などの状況について総合的に考え、
判断します。

それでも判断しにくい場合には、
OECDモデル条約4条では、
二重住居者について振り分け規定が
あります。


■課税上の取り扱いの違い

日本の税法上の居住者であれば、
国内源泉所得・国外源泉所得について、
日本で課税されます。
一方、
非居住者であれば、
国内源泉所得のみが課税されます。


■具体的な2つの事例

1つめは、武富士事件です。
消費者金融大手の武富士会長夫妻から
会長の長男が
海外法人株の生前贈与を受けましたが、
香港に住所があるので
日本の贈与税は課されないとして
申告しませんでした。

ところが課税庁は
会長の長男を日本の居住者であるとして、
約1,600億円の申告漏れを指摘しました。

東京地裁平成19年5月23日の判決では
納税者勝訴、
一方、東京高裁平成20年1月23日の判決では
納税者敗訴でした。

「生活の本拠」をどのように判断するのかが、
争点となっています。

2つめは、
ハリーポッター事件です。
世界的ベストセラー「ハリーポッター」の
日本語訳を手がけた翻訳家の松岡氏が、
スイス居住者であるとして
日本で20%の源泉徴収のみで
申告をしていませんでした。
2006年に課税庁は、
松岡氏を日本の居住者であるとして、
35億円の申告漏れを指摘しました。

松岡氏が頻繁に帰国し、
出版・PR業務をしていたこと、
日本の会社の社長であったことなどを理由に、
生活の本拠は日本にあると
認定したものです。

その後2007年には政府間協議により、
最終的には日本の居住者であるとの判断が
下されました。
この事件において、
源泉徴収では20%、
申告では約50%(必要経費控除後)と
税率が異なり、
慎重な判断が要求されます。


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2010年7月29日(木)
posted by 税理士西塚智裕 at 11:32| Comment(4) | TrackBack(0) | 所得税

2010年07月28日

大会社の子会社の場合〜グループ法人税制

資本金1億円以下の会社に認められている
法人税法の優遇措置のうち、
以下の特例が、
資本金5億円以上の法人の
完全支配関係のグループ法人には
認められなくなりました。

@中小企業の軽減税率

所得800万円までは基本法人税率30%が
18%に軽減されております。

A特定同族会社の留保金課税の不適用

特定同族会社(1株主グループが
50%以上株を所有している同族会社)には、
会社内部に留保した利益に対して
特別な税金(留保金課税)が課せられていますが、
資本金1億円以下の特定同族会社には
適用がありません。

B貸倒引当金の法定繰入率による繰入

製造業は8/1000とか、
小売・卸売りは10/1000とかの
簡便な法定繰入率をつかえます。

C交際費等の損金不算入制度における定額控除

年間600万円までは、
交際費等のうち90%を経費として
認められております。

D欠損金の繰り戻しによる還付制度

前期黒字で今期赤字の場合は、
前期の税金の還付が受けられます。


要は、
資本金1億円以下の法人でも、
資本金5億円以上の法人の
完全支配関係にある法人は、
税務的には資本金1億円超の法人と
同じとみなして課税することと
なりました。


この改正は
平成22年4月1日以後開始する事業年度からの
適用となります。


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2010年7月28日(水)


posted by 税理士西塚智裕 at 11:24| Comment(3) | TrackBack(0) | 法人税・会社経理

2010年07月27日

グループ法人間の寄付金〜グループ法人税制

■寄付金認定とは

税務調査では、従来
グループ法人間の取引で、
特に問題とされたのが、
寄付金の認定の問題です。

グループ法人間の取引は、
第三者間のように
利害が対立していない分、
ややもすると恣意的になりがちです。

例えば、
同じ場所に本社があるグループ法人の
A社とB社が、
その家賃は儲かっているA社が負担し、
赤字のB社から
相応の家賃を取得していなかった場合などは、
A社からB社に
家賃相当分の寄付があったとされ、
以下の処分が下されておりました。

@
A社はB社に相当の家賃をもらった後に、
その金銭を寄付したと考えますから。

「寄付金/受取家賃」とされ、

家賃の一部が収入とされ、
その代わり寄付金が認められます。

しかし寄付金は税務上限度計算があり、
経費として認められるのは
その限度までですから、
限度を超えた分は全く経費になりません。

A
B社はA社に相当の家賃を払った後に、
その金銭を、
A社より寄付として返してもらった
と考えられますから。

「地代家賃/雑収入(寄付金)」
とされ損益に影響はありません。

結果としては
寄付金の損金不算入部分の所得が
増えると言うことでした。


■今後はどうなるか?

完全支配関係にあるグループ法人間の
こう言った取引は、
次のようになります。

@
A社の寄付金は全額否認されます。
よってA社は、
相当の家賃分が課税されます。

A
B社の寄付金は全額無かったものとされます。
よってB社には
相当の家賃分の経費が認められます。


A社もB社も利益を出していれば、
グループとしての税金は
行って来いで変わりませんが、
A社が黒字、B社が赤字の場合は、
B社の赤字が増えて、
A社の利益が増えると言う結果となります。

また
この改正は
法人が完全支配している場合に適用されますが、
個人が完全支配している場合や、
個人と法人で完全支配している場合には
適用されませんのでご留意下さい。



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2010年7月27日(火)
posted by 税理士西塚智裕 at 11:17| Comment(1) | TrackBack(0) | 法人税・会社経理

2010年07月23日

ふるさと納税

平成22年度の税制改正において、
所得税の寄付金控除の適用下限額は、
改正前の5千円から
2千円に引き下げられました。

一方、
住民税(道府県民税+市町村民税)においては、
改正はありませんでした。

寄付金の取扱に関しては、
所得税では
所得控除(政党等寄付金は除く)ですが、
住民税は税額控除です
(政党等寄付金の税額控除はありません)。


■住民税の寄付金税額控除の方法

税額控除額は、通常、

{寄付金額の合計(総所得金額等の30%が限度)−5千円}
×10%です(基本控除額)。

寄付金額4万円であれば、
住民税の税額控除額は、3,500円
「(4万円−5千円)×10%」です。

ところが、
寄付金がふるさと納税といった
地方公共団体の場合には、
上記控除額(基本控除額)に
「特例控除額」が加算されます。
この
「特例控除額」とは、
次の算式で求められます。

(寄付金額−5千円)×(90%−所得税の限界税率)
所得税の限界税率とは、所得税の税率です。

なお、
特例控除額は、
住民税所得割額の10%が上限です。


■具体的な税額控除額の計算

例えば、
給与収入700万円で夫婦子2人、
ふるさと納税(寄付金)4万円のケース
(住民税所得割296,000円、所得税の限界税率10%)で
試算してみましょう。

 @住民税の基本控除額
 (4万円−5千円)×10%=3,500円
 A住民税の特例控除額
 (4万円−5千円)×(90%−10%)
  35,000円×80%=28,000円

住民税所得割の10%は29,600円なので
28,000円は限度額の範囲内です。

計算の結果、
税額控除額は31,500円(@+A)となります。

全く同じ条件で同額の寄付金でも、
ふるさと納税など地方公共団体以外の寄付金
であれば、
負担率91.25%(40,000円−3,500円/40,000円)、
一方、
寄付金がふるさと納税であれば

負担率21.25%(40,000円−31,500/40,000円)

です。

さらに、
所得税(実効税率10%)を考慮すると
負担率11.75%と軽減されます。
ふるさと納税の寄付金の有利性が際立っています。

上限はありますが、この負担率は、
所得とふるさと納税の寄付が増えるにつれて
軽減します。


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2010年7月23日(金)
posted by 税理士西塚智裕 at 11:08| Comment(1) | TrackBack(0) | 所得税

2010年07月22日

利子割と源泉税

■税務P/Lと税務B/Sへの記載

会社決算書の貸借対照表を
B/Sと、
損益計算書を
P/L と言ったりしますが、

これを税務的に修正表現したものが、
法人税申告書の別表四(税務P/L)であり、
別表五(税務B/S)です。

利子割税も源泉所得税も、
一般的には損金不算入なので、
別表四(税務P/L)に記載されます。

また、
利子割税も源泉所得税も、
一般的には、納付税金に充当され、
あるいは納付額を超えているときは
還付を受けます。

ところが、
別表五(税務B/S)に
還付未収税金として記載されるのは、
利子割税だけです。

なぜ、扱いが異なるのでしょうか?


■利子割税とはどんな税金か?

都道府県民税利子割税は、
銀行などの金融機関から
利子等の支払いを受ける際に
5%の税率で課される税金で、
15%の税率の所得税と同時に
源泉徴収されます。

利子割税については
その発生時点で納付が済んでいるのに、
法人都道府県民税の計算では
納付済利子割は損金不算入とされ、
二重課税になってしまいます。
それで、
法人都道府県民税の前払いという扱いをして、
充当又は還付とするので、
還付のときは還付未収税金が
認識されることになります。


■源泉所得税とどこが違う?

一般的には、
源泉所得税も損金不算入なので、
二重課税排除の手続きとして、
法人税の前払いの扱いを受け、
法人税に充当もしくは還付ということに
なります。

ただし、
これは一般的なケースのことであり、
利子割には
損金不算入の扱いしかないのに比べ、
源泉所得税には
納税者の選択による損金算入の余地があるので、
必ずしも二重課税になるとは限りません。

それからもう一つ、
源泉所得税の損金不算入選択のタイミングが
申告の時点であり、
決算期末時点ではない、ということです。
それで、
損金不算入を選択しても、
利子割と異なり
期末時では還付未収税金が
税務上認識されないのです。


■自治体間の調整は内部で

法人に対して課税された
それぞれの自治体ごとに発生した利子割税は
その発生した地域の自治体への納付税額から
控除すべきものですが、
規定としては、
本店所在地の自治体への納税額から
控除もしくは還付とされ、
その後各自治体間で
その負担を振り分けることに
なっています。


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2010年7月22日(木)
posted by 税理士西塚智裕 at 11:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 法人税・会社経理

2010年07月21日

適格退職年金制度の廃止後の移行先

適格退職年金制度の廃止後の移行先は

退職金積立の適格退職年金は
平成24年3月までに
他の制度に移行するか
廃止しなければならないことと
なっています。

移行先は何種類かありますが
50%の企業が、
中小企業退職金共済[以下中退共]を
選んでいると言われています。

中退共制度は
昭和34年に制定され、
国が作った従業員のための退職金制度
として、
勤労者退職金共済機構が
運営しています。


中退共のメリット・デメリット

中退共に移行した場合の長所としては、

@
適格退職年金から移行する時に
退職金の積み立て不足があっても移行可能。

A
毎月の掛金は5千円から3万円まで、
16種もあり、変更もできるので
ポイント退職金制度等にも利用でき、
パートタイマーには
月2千円から4千円の特別掛金もある。

B
新規加入(移行は対象外)の企業には
掛金月額の2分の1を1年間、助成があること。

C
積み立て不足があっても
追加拠出掛金は行われないこと。

D
積立金に特別法人税が課せられないこと。

E
積立金はポータビリティができ、
他の中退共に加入している企業との
通算も可能。

F
申込みは
金融機関等で簡単にできること。

G
退職金は60歳未満でも
受給できること。


全額を中退共に移行しない企業の場合は、

@
掛金が1年未満では退職しても
掛け捨てになってしまうことと、
2年未満でも掛金を下回った額しか
支給されないこと。

A
現在運用利回りは1%であるが、
利回りの変動で
受取額が定まりにくいこと。
(但、予定運用利回りを上回った場合は
付加金が付く)

B
退職金は企業を経由せず、
本人の口座に直接振り込まれる。
それゆえ「懲戒解雇」の場合でも
本人に全額が渡ってしまい、
たとえ減額できた場合でも
企業には戻らず国庫金となる。

このような事を想定し、
一部は社内積み立てや
民間保険の利用等と
併用している企業もあります。


家族従業員も加入対象者に

今までは加入できなかった
同居の親族のみを使用する事業
に使用される者で、
使用従属関係があり、
賃金の支払いを受けている者は
新たに加入できることに改正されました。
 

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2010年7月21日(水)
posted by 税理士西塚智裕 at 12:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 労務・労働

2010年07月20日

繰戻還付

■繰戻還付という制度

所得に課税する法人税や所得税には、
所得が赤字だった時の、
赤字の翌期以降への繰り越しの制度がある
とともに、

赤字の前期への繰り戻し
という制度もあります。

法人税の繰戻制度は
過去長らく適用停止になっていましたが、
昨年の税制改正で
資本金が1億円以下の法人につき
制度復活がありました。

ただし、
今年の税制改正で、
適用法人のうち
資本金5億円以上の法人と
完全支配関係にある法人の場合は
対象から除かれることに
なりました。


■税務調査があるという噂があるが

繰戻還付の請求があると、
「必要な事項について調査し、
その調査したところにより」還付する、との
税法規定があるので、
繰戻還付請求をきっかけに、
必ず税務調査があると言われていました。
でも、
調査と言っても、
机上調査とか電話確認調査とかも
「調査」の類なので、
実際は
このような軽い調査で済んでいる事例が
多そうです。


■還付額の計算の仕方

還付請求ができる金額は、
前期法人税額に
当期欠損金額を掛け
前期所得金額で割って算出します。

前期の課税所得が1000万円だったとすると、
前期税額は次のようになります。

800万円×18%=144万円
200万円×30%= 60万円
計 204万円

当期の欠損金が
400万円だったとすると、

204万円×400万円÷1000万円=81.6万円

還付請求税額は、
このように計算されます。


■地方税は要注意

法人事業税、法人住民税には
繰戻制度はありません。
繰戻制度を適用すると
法人税ではその分繰り越しの赤字は
消滅してしまいますが、
法人事業税では消滅せず、
翌期以降7年間に亘り繰り越されます。

法人住民税では、
課税標準は所得額ではなく
法人税額なので、
翌期以降の課税標準となる法人税額から
繰戻還付法人税額を控除します。


■繰戻還付適用による新たな添付書類

法人税で欠損金の繰戻還付を受けるときは、
「欠損金の繰戻しによる還付請求書」、
翌期の法人住民税では
「控除対象還付法人税額の控除明細書」
の添付が必要です。


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2010年7月20日(火)
posted by 税理士西塚智裕 at 11:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 法人税・会社経理

2010年07月16日

自己株式の公開買付〜法人税・所得税

■自己株式の公開買付案内

上場会社の自己株式公開買付案内
をみていると、
公開買付価格は
直近データを参考に決定しているものの、
多くの場合
1割ぐらいのディスカウント価格に
設定しています。

逆に、
ディスカウントのない買付価格設定
の場合には、
公開買付期間の株価が
1割ぐらい上昇する傾向にあります。


■公開買い付けに対する税法

会計では、
公開買付への応募を
単なる株式の譲渡としつつ、
自己株式の取得は
資本出資の反対の行為なので、
会社の部分的な清算とも考えます。

税法では、
その部分清算だとする考え方を
徹底させています。
即ち、
当初出資額を超える回収は
清算配当所得、
満たない分は清算損失です。

当初出資額を超えた値段で
株を取得していたとすると、
その超価額も清算損失です。
公開買い付けに応じた法人の税務

単位当たり公開買付価格が500で、
当初出資額が200で、
株式簿価が550だとすると、

清算配当所得は500−200=300、

清算損失は550−200=350

です。

配当とされた300は
法人税法では50%が益金不算入
とされており、
清算損失350は単純な損金です。

税負担が40%とすると

(350−300×50%)×40%=80

の節税になります。

公開買付応募で50損したのに、
資金ベースでは80−50=30
得したことになります。

公開買付価格が
市場価格より割安でも
応募者不足とならない理由は
ここにあります。


■公開買い付けに応じた個人の税務

個人の場合は、
先の清算配当所得と書いたものについては
配当所得課税、
清算損失と書いた部分は
株式分離所得の譲渡損として扱われ、
多くの場合
譲渡損は切り捨てとなってしまうので、
最高税率課税となる可能性もある配当課税だけが
標的にされてしまいます。

これでは、
個人の公開買付応募に
税制が邪魔していることになるので、
単純な株式譲渡と扱うという
特別立法があります。


■今年9月、12月まで

法人の税務では、
今年の10月から、
公開買付を予定して取得した株式に係るみなし配当
は100%益金算入になり、
個人の株式譲渡課税の特別立法は
今年いっぱいで廃止となります。


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2010年7月16日(金)
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2010年07月14日

譲渡損益調整資産の譲渡等〜グループ法人税制

平成22年10月1日以降、
完全支配関係のある法人間で
譲渡損益調整資産を移転した場合、
その移転により生じた損益は、
課税を繰り延べることと
なりました。

読んで字の如くなのですが、
意味の解らない言葉が多いので
解説します。


■移転って何?

移転とは、
売買(譲渡)のほか
交換や贈与現物出資などが含まれます。


■譲渡損益調整資産って何?

譲渡損益調整資産とは、
固定資産・土地等・有価証券・金銭債権・繰延資産
です。

棚卸資産のほか
売買目的有価証券と
移転直前の帳簿価格が1,000万円未満の資産は
除外されます。
(但し不動産屋さんの土地は除外されません)


■課税の繰延って何?

課税の繰延とは、
移転のあったときは
課税しませんということです。
課税しませんということは、
利益が出たときの話ですが、
損が出たときも認めません
ということです。


■ではいつ課税するの?

その資産が他へ譲渡される他、
減価償却されたり、
除却されたり等
一定の条件に該当したときに、
課税します。
課税しますとは損も認めます
と言うことです。


■事例

@
A社が5億円で買った土地が
値下がりしてしまったので
グループ内の法人B社に
2億円で買ってもらった。
この場合の損3億円は
損として認められません。

A
そのうちB社も資金が必要になり、
土地も若干上がったので、
C社(グループ外)に
3億円で買ってもらいました。

B
この時点で
B社に1億円の利益が出る代わりに、
A社の3億円の損が認められます。


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2010年7月14日(水)
posted by 税理士西塚智裕 at 11:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 法人税・会社経理
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